内容説明
作家の「私」が亡命したのは、原発の受け入れを交換条件に日本から独立した国、楽しい夜道、安全な子育て、女と女で暮らす性愛のなき「女人国ウラミズモ」!作家は神話を作りながら、この悪夢に魅了されて…。読者悲願の「聖書」が17年ぶりに復刊。渾身の書き下ろし自作解説一挙50枚。2003年センス・オブ・ジェンダー大賞受賞作!
著者等紹介
笙野頼子[ショウノヨリコ]
1956年三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。81年「極楽」で群像新人文学賞受賞。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年『タイムスリップ・コンビナート』で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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還暦院erk
5
図書館本。『殺人出産』以上にブッ飛んだディストピア小説らしいと、手に取った。初めの部分、夢か妄想かという状況、3回くらい繰り返して読んでも良く分からなかった…が、先へ進むと、いろいろ「うわーっ」だった。まぁ、とにかく「うわーっ。」特に原発の「原」の字が特殊な字体で、太文字で書かれたりすると超不気味(夜中にこの字を見せられたら叫ぶレベル)。「…子供を育てたいか。要らない。生んで三秒で飽きて捨てたい。だって『パクパク』という擬態語を使ってまで自分の子供の食欲なんか描写したくないから」←ここ、何故か笑えた。2021/06/18
37
4
女たちのレジスタンス。性愛なき世界。神話の語り直し。ナラティブが大事だというのは、最近特に聞かれるようになった気がするが、しかしこれが書かれたのは10年も前のことなのだ。 夫や元恋人の男性に暴力をふるわれて亡くなる女性のニュースを頻繁に耳にする。まったく見ず知らずの男性に、暴力をふるわれたというケースも聞く。日本だけではなく海外でも女性の安全は担保されていない。ウラミズモの女性たちの男性への仕打ちは酷いものだが、これは現実の反転でもあるのだ。 だから、当然(だと思う)私はウラミズモに住みたいとは思わない。2020/09/14
こたつ
3
私の神は私だけの神であって、他の何人たりとも価値を下げたり、貶めたり、引きずり下ろす事などできない。…自分の神を大事にしようと思える大事な作品です2021/07/17
かめすけ
2
「タイムスリップ・コンビナート」に続く笙野頼子2作目。絶版になっていた本作をフェミニズム系の出版社であるエトセトラブックスにより、作者の巻末のあとがきを加えて再版されたもの。相変わらず不思議なストーリーだったが、「原発」の「原」のフォントが終始オリジナルのものであったのは肝を抜かれた。日本神話とフロイトの夢解釈を学ぶきっかけになった。これは物語の核をつかむのに必要な行為かもしれない。あとがきp285「現実のフェミニズムはもう最初から捕獲の花園だったのではないか」2021/10/05
みやったー
2
内臓から湧き上がる痛みのような読後感2021/07/22