内容説明
稀代の傑作『進撃の巨人』は人類に何を問いかけるのか。新たな視座をもたらす本格評論集。
目次
『進撃の巨人』は物語ではなく神話である(宮台真司)
高度に発達した厨二病はドストエフスキーと区別が付かない(斎藤環)
ヒューマニズムの外へ(藤本由香里)
笑う巨人はなぜ怖い(島田一志)
巨人に対して抱くアンビバレントな感情の正体(成馬零一)
最もファンタスティックなのは何か(鈴木涼美)
水晶の官能、貝殻の記憶(後藤護)
立体機動装置というハッタリと近代兵器というリアル(しげる)
特別付録 渡邉大輔×杉本穂高×倉田雅弘『進撃の巨人』座談会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
52
【時代とシンクロした作品】宮台真司、斎藤環、藤本由香里、島田一志、鈴木涼美、成馬零一ら8人の識者が、独自の視点で縦横無尽に論じた漫画評論集。特別付録で、渡邉大輔(批評家)・杉元穂高(映画ライター)・倉田雅弘(漫画ライター)ら3人の座談会も収録。2022年刊。倉田は、<コマ割りがすごくうまいんですよね。アクションシーンは、キャラクターの位置関係を示す引きの絵を効果的に入れて、わかりやすく構成しているし、ここぞという時に大ゴマや見開きを効果的に使用している。だから漫画力がすごく高い人なんだと思います>と。⇒2025/01/28
きみたけ
50
めっちゃ面白かった😄独自の視点を持った8名の識者が、漫画「進撃の巨人」について縦横無尽に論じた評論集。社会学者の宮台真司氏を皮切りに、精神科医・漫画研究家・ドラマ評論家・ミリタリーライターなど、各分野のスペシャリストによる独創的な論考が展開されていて、最後まで楽しめました。前提として「進撃の巨人」をある程度熟知してから読むのがオススメです。個人的には、巨人の生殖器とミカサ・アッカーマンの愛の第6章が興味深かったです。2025/01/31
akihiko810/アカウント移行中
21
『進撃の巨人』論考集。印象度B+ 「進撃~」はたぶん1,2巻しか読んでない。完結まで長すぎて今から読む気もしない(汗)。なのだが、どうやら「大傑作」らしい、というのをよく聞くので、本書を読んでみた。当然ある程度はネタバレされるのだが。 宮台や斎藤環といった、信頼できる論考者の評論なので、なかなか面白い。「エヴァはひたすら内面を描くが、進撃はひたすら外部(世界の謎)を描く」作品だということ。「世界によって規定された<私たち>はどのように生きるか」という物語なのだろうと思った2024/11/22
原玉幸子
20
『進撃』の絵は、評者曰く「コマ割り/見せ方が上手い」とは! これは「漫画が何たるか」を知り、好きな人でなければ分からないことでしょう。『進撃』が一種の「ピカレスク小説」であることにはふむふむ程度でしたが、宮台の「善悪のトートロジー批判」には、気付きの成程なぁでした。私の「『進撃』のテーマが今一つ感じられなかった」との感想は、民族浄化思想が惹き起こす紛争や巨人による破滅物語の解決が、ミカサのエレンに対する恋情で全てなのか!と、納得出来なかったからかと今思えばです。もっと深く読み解けって?(●2022年・夏)2022/05/06
内島菫
17
評論の対象である『進撃の巨人』に比して、本書に文章を寄せている八人に割かれる紙幅にかなり限りがあるため、深みではなく各々の切り口がメインとなる評論集。論の十分な展開にまで至らなくても興味深い指摘が随所に見られ、小さくともキラリと光る貴石を次々と拾い集めるようなある種の疾走感を味わいながら勢いを持って読める。特に注目すべきは(やはり)後藤護氏の「水晶の官能、貝殻の記憶 『進撃の巨人』における「小さな」もの」である。その美学的直感と知識に支えられた論は、本書の中でも例外的に独自の展開と、2022/03/11