感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
1
「人間襤褸」は、大田が自身の被爆体験を膨らまし、複数の登場人物の視点から、線でなく面として被害の様相を伝えている。ただ、小説としては通俗的だし、雑に感じた。「夕凪の街と人と」では、8年後、広島の基町にあった、妹家族が住む仮設住宅的な家に滞在し、すぐ近くの土手にあるバラック街を訪れ、住民たちから話を聞くルポルタージュ的な私小説。小説になってないと酷評されたとのことだが、自分は傑作だと思う。被爆後の貧困層の苦境を共感的に伝えている。解説にて、大田作品は「記憶の継承」として、今こそ再評価されるべきと。同感だ。2022/08/08