内容説明
「人と異類との境界線」を問うことで、人間の定義を再考する。異類との恋愛・結婚が描かれた摩訶不思議な西洋文学の旅へ!
目次
第1章 エウリピデスの悲劇『メデイア』―異類と人間の婚姻が破綻するとき
第2章 メリュジーヌ伝説考―蛇の尾をもつ妖精の悲劇
第3章 婚礼に足―騎士シュタウフェンベルク伝説とその周辺
第4章 ヘンデルの『エイシスとガラテア』―牧歌世界の悲劇
第5章 二つの『美女と野獣』―妖精物語とその驚異
第6章 女吸血鬼カーミラと少女ローラ―レ・ファニュの吸血鬼譚を現代的観点から読み直す
第7章 狼男ではない「狼男」との婚姻―異類が困難な時代
第8章 ラヴクラフトの“反転”する恐怖
特別寄稿 パプアニューギニアの犬娘婚神話
著者等紹介
山内淳[ヤマウチアツシ]
1951年生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専攻卒業、ディジョン大学(現ブルゴーニュ大学)大学院博士課程修了(文学博士)。現在、日本大学芸術学部教授。フランス文学、比較文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
25
人間と人間以外の存在が縁を結ぶ物語。西洋文学における異類婚の物語を「人間と異類との境界線を越える物語」として読み直す試み、としての一冊。取り上げられるのは、「美女と野獣」や「メディア」、「水の精」など。まさかの「吸血鬼カーミラ」まであったのには驚きでしたが、解説を読んでみればそれも納得。読み物としても楽しく、面白かったです。2021/03/20
カナリア
17
人外。それは神、妖精、怪物であったり、さまざまだ。女性は魔女や水の妖精。男性は狼男、吸血鬼。そういったものと結ばれる話はあるけど、多くは別れ話になる。 私が好きな美女と野獣の始まりの話や西洋では騎士と妖精、蛇女との婚姻の話が興味深かった。日本でも白蛇は神様のお使いと言われることがあるが、西洋でも畏怖の対象なのだろうか。馴染みのないギリシャ神話は難しかったが、読んで良かった。2021/04/26
rinakko
13
キリスト教が行き渡った西洋においては、他の地域に比べると異類婚姻譚は多くない。とは言え、ここに取り上げられた作品は異類婚姻譚を広義に解釈した点で幅広く、読み応えのある内容だった(個人的にはピランデッロの短篇が入っていたの嬉しい)。イアソンに裏切られ男性優位の社会(=ギリシア)で孤立させられたメデイアの、本来の自分(=神)への回帰(第1章)。女吸血鬼カーミラと少女の同性愛的関係にみる、周囲からは否定されてしまう “当人同士にしかわからない理由や価値といったものの重要性”について(第6章)。など頗る面白かった2020/12/14
ハルト
12
読了:◎ 異類、すなわち人間外である生物と、人間との婚姻譚。魔女、妖精、獣、魔物などの愛と裏切りとが語られている。こうして読むと異類婚姻譚には、破局で締め括られるものが多く、異質なもの同士の交わりが悲劇をもたらすものなのだ認識されていたとわかる。けれど近年、BLなんかで獣人モノが増えているのを見ると、「人間と異類との境界線を考える物語」は、これからどのように変化を遂げていくのかが興味深い。2021/04/28
鳩羽
7
人間と人間以外の生き物が婚姻関係を結ぶ物語は古今東西に見られ、それは畏怖やおぞましさ、美しさ、別れの運命などロマンティックな魅力で読者を惹きつけてきた。その中でも特に、メディアやメリュジーヌ、美女と野獣、吸血鬼カーミラなど、西洋文学に表れた異類婚姻譚について論をまとめた本。神話や伝説からの先祖への箔付け、子孫への才能や財宝の伝承という効果もあれば、異質なものと共栄と反発の歴史を表しているかのようなものもある。そもそも婚姻にはそういう側面があったのだろうとも思え、それを強調したのが異類婚姻譚なのかなと思った2021/01/13