内容説明
ウディ・アレン、アーサー・C.クラーク、スーザン・ソンタグらに疎まれ、業界ではノベルではなく、ノベルティとして扱われてきた映画ノベライゼーション作品。しかし、およそ100年間にわたるその歴史をひもとくならば、もはやノベライゼーションを抜きにして、映画は語れなくなるだろう。“ノベライズ”が読みたくなる、あの名作をもう一度観たくなる、偉大なるノベライゼーションの世界へようこそ!
目次
序章 ウディ・アレンはノベライゼーションがお嫌い
第1章 ノベライゼーションの夜明け
第2章 小説化するゴジラたち
第3章 『勝手にしやがれ』はどこまで勝手にできるか
第4章 ノベライゼーションの黄金期
第5章 ノベライゼーションの現実
第6章 『かいじゅうたちのいるところ』を探して
第7章 メタ・ノベライゼーションのすすめ
終章 グレート・ノベライゼーションの夢
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
57
映画ファンと読書好き、両者から疎んじられているであろうノベライゼーションを、ポピュラーなコンテンツを扱って簡潔に紹介した本。決して一方的ではない複雑かつ非対称的な相関関係は、映画好きとしては裏話のような面白さがあった。商業利用から一歩踏み込んでポストモダン文学にも触れられているのが嬉しい。デリーロ(『ポイント・オメガ』)、マッカーシー(『血と暴力の国』)等、幸いどれも読んだことがあったが、とりわけ大好きなクーヴァーの『ようこそ、映画館へ』にも紙幅が割かれていたのは嬉しかった。2020/05/05
パトラッシュ
9
文学作品は作家の孤独な営為の果てに生み出されるものという牢固とした観念のため、作家だけでなく脚本家、監督、プロデューサーとの合作といえる映画ノベライゼーションは観客動員のためのノベルティグッズ扱いされてきた。そうした面もなくはないが、多くの作家は複雑な思いを抱えつつプライドをもって仕事を積み重ねてきた歴史から現状まで概観できる。特殊な創作環境や著名な監督の積極的な関与は、映画史研究の面からも面白い。エンタメやラノベとも異なる文学ジャンルを形成してきたノベライズは、文化的にも重要な要素だと再認識させられる。2020/07/11
蘇我クラフト
6
映画ノベライズ(つまり映画の後に小説を販売すること)について、いろいろな意見があった歴史を振り返ることができる。ウディアレンは特に気に入っていなかったと。脚本の途中に小説執筆が開始されることもあり映画との齟齬が生まれる可能性に孕んでいるこのリスクともいえる仕事を引き受け小説家として確立するまで仕事を続ける人もいれば、ベストセラー作家もまたこの企画に参加する。映画を見てから読むか、読んでから見るかは結構自分でも決め兼ねる事柄だが、こう聞くと原作のないものは後からの方が良さそうだ。2023/10/10
なーちゃま
3
小説→映画化といったアダプテーション研究を取り扱った前作『映画原作派のためのアダプテーション入門』とは正反対に、映画→小説化のノベライゼーションを扱った本。波戸岡先生自身の軽快な語り口と同様にリズム感と実例を扱う本書もまた大変読みやすかった。ノベライゼーションが行われる特殊なプロセス(映画を小説化するのではなく、多くの場合、映画の脚本の小説化である)故に権利関係や、実際の映画とノベライズ(そして原作)との乖離が生まれる様子など、ノベライゼーションという文芸ジャンルを概観できる。面白かったです。2020/07/05
takao
2
ふむ2020/09/20