内容説明
公式イメージでない、パーソナル・カラー写真が呼び起こす、生々しい記憶、新たな印象、意外な発見―。米軍関係者が撮ったパーソナル写真に残されていた1945‐52年・占領期京都の「色」カラー写真200点を高精細画像で掲載。
目次
総論(占領期カラー写真の里帰り;占領期の京都を眺める―見えてくるもの、見えてこないもの)
写真(1945年9月25日 京都進駐;撮影者たち;戦争の影を踏む;変わらない日常の風景 ほか)
各論(カメラとカラーフィルム;写真と色彩をめぐる難問;米軍の西日本占領拠点であった京都;米軍ツーリズム ほか)
著者等紹介
植田憲司[ウエダケンジ]
京都経済短期大学専任講師
衣川太一[キヌガワタイチ]
神戸映画資料館研究員、フィルム資料研究者
佐藤洋一[サトウヨウイチ]
早稲田大学社会科学総合学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chang_ume
12
話題を呼んだ京都文化博物館企画展の図録・副読本。「京都にとって“先の戦争”は応仁の乱」なる陳腐かつ蒙昧な言説が依然流布されるなかで、本企画展は戦争当事者としての占領期京都を文字通りに活写した。80年前の撮影写真とは思えない鮮やかさで、コダックらしい色温度高めの発色はぜひ展示現物を見てもらいたい。街頭の傷痍軍人や焼失前の金閣など、カラー撮影で貴重な風景が蘇る。またカメラを向けられた人びとの屈託のなさも印象的で、「敗北を抱きしめた」表情とはこのようなものかと思った。巻末の占領期日本年表も必見。2023/03/31
田中峰和
3
1945~52年、米軍による占領期京都の姿をカラーで残した貴重な記録が米国に残されていた。当時の日本人ではモノクロ写真がほとんど。米軍関係者がカラーのスライドフィルムを使って撮影した大量の個人写真は、その大半が撮影者によって本国に持ち帰られたが、最近になって世に出てくるようになった。この時期、進駐軍幹部の住居として、大邸宅が差し押さえられた。接収住宅で営まれた暮らしがどのようなものであったか。家族のアルバム写真が当時のリアルな住生活を伝えてくれる。追い出された日本人家族がどこに住んでいたのかも興味深い。2023/05/11
林芳
2
写真も解説もたっぷりな書。今でもどちらかといえば「灰色」がメインの色に思われる京都だが、当時も町そのものは灰色で、その中に人々の服であったり、看板や飾りなどが鮮やかな色を添えている。いろんなところで大きく変わっていく京都だけれど、不滅な京都でもある。2023/10/12
Atsumi_SAKURADA
0
地元紙での連載と連動していた展覧会の図録です。占領期の京都市周辺の日常について、現在、私たちが触れられる克明な一次資料は後期高齢者以上の方々による直接の記憶ですが、ここには占領を任務として駐留した米軍関係者たちの視野が記録として保存されています。専門家たちによる解説は色彩の雄弁を案内するだけでなく、被写体となった人・街と撮影者たちとの対峙の距離感と文脈を浮かび上がらせ、平面の記録を立体化させてくれます。その物語は、今日の広大な博物館"Kyoto"の雑踏がグローバル化する前日譚なのでしょう。2024/12/16