内容説明
「韓国籍…?」戸籍に見慣れない文字を見つけたのは高校二年生のときだった。父が在日コリアン二世だと知った瞬間だった。そこから私の、ルーツを巡る旅が始まった。
目次
第1章 旅のはじまり
第2章 「家族とは何か」から「故郷とは何か」へ
第3章 ルーツをたどって
第4章 残された手がかりをつなぎ合わせて
第5章 ヘイトは止まらない濁流のように
第6章 祖父母の「故郷」、韓国へ
著者等紹介
安田菜津紀[ヤスダナツキ]
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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天の川
61
日曜朝の情報番組で時々拝見するフォトジャーナリストの安田さん。弱い立場の人々に寄り添う発言が印象的だ。高校2年生の時に自死した父が在日2世だったことを戸籍によって知り、自らのルーツを探ることで在日の人々が置かれた過酷な状況を知ることになる。ヘイトスピーチや朝鮮学校への差別などは報道によって知ってはいたが、この本で「朝鮮籍」と「韓国籍/北朝鮮籍」の根本的な違いを初めて知った。(安田さんの自死した異母兄の戸籍が非嫡出子であった理由もそこにあった。)安田さんと共に学ぶ。知ることで見方が変わると改めて思う。2024/03/19
しゃが
53
著者の父は在日コリアン2世だった。死後に知り、揺らぐアイデンティティは彼女を多くの疑問とともにルーツを巡る旅へ、フォトジャーナリストとしても。祖父母・父・兄の少ない手掛かりで、根気強く痕跡をたどっていく…。祖父たちの男たちの足跡でようやく、親戚たちに会うことができたが、祖母はわからなかった。歴史や文化のなかでも女たちの置かれたことがこれからのフィールドワークになるのだろう。文中の「弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした」は不当な出来事にあった人や今の差別にあっている人すべてに通ずる重い言葉だった。 2023/07/02
Mc6ρ助
19
これは単に安田菜津紀さんの単にクンタキンテを求める旅ではないのでたどり着いたら終わりとなる話ではない(いやまあ、「ルーツ」自体がクンタキンテにたどり着いて終わりな話ではなかったが)。清算すべきものを清算しなかったことが悔やまれてならない今の日本、同じことを繰り返しそうなことが辛い。繰り返される『「弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした」(p211等)』はそれはそうだけど、社会の支えを弱めたのは、自助、公助と宣いお金は吸い上げて社会の上の方で回す体質を肥大化させてしまったからだよね。2023/09/27
こかげ
17
お父様が在日コリアンである安田菜津紀さんの、ご自身のルーツ…父親や祖父母の人生をたどる旅の記録。いわゆる「ど真ん中」の在日ではない安田さんならではの、そしてご家族との関係も絡み合ったアイデンティティの複雑な迷い。安田さんにとって「故郷」「家族」とは何か。時には蓋をしてきたそれらの葛藤に、真剣に向き合い、紐解いていかれる過程を、折々に出会った人々や出来事など交えて素直に記録されていた。進展があって本当に良かった。また、「在日」という大きな主語ではなく、一人一人が辿った人生を想像することができた。2023/07/08
二人娘の父
14
またひとつ、国をまたいだ人生の物語を知ることができました。それはとても繊細で、心の奥のところに響くものでした。父と娘、兄と妹、祖父祖母と孫…家族と言ってしまえば簡単ですが、けっして単純ではない物語。川崎ふれあい館は、私の出身地の近所であり、初めて組んだバンドの練習場所でもありました。私の中にもある加害の過去、無関心過ぎた過去と、著者の歩みを重ねると、とても重苦しいものが胸にあることが分かります。特にお兄さんの生涯が忘れられません。一人でも多くに人に読んでもらいたい「家族」の物語です。2023/05/13