内容説明
東洲斎写楽の「正体不明の謎の絵師」「世界三大肖像画家のひとり」――しかしそれらは錯誤の伝言ゲームが生み出した「幻想」だった!?
目次
序
一章 世界三大肖像画家
二章 写楽別人説
三章 能役者「斎藤十郎兵衛」
結
著者等紹介
高井忍[タカイシノブ]
1975年京都府生まれ。立命館大学卒。2005年、短編推理小説「漂流巌流島」で第二回ミステリーズ!新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
写楽は誰かという謎ではなく、多くの人が解明に挑んだ長いブーム自体が謎解きの対象となる。確かに「外国人が絶賛する正体不明の浮世絵師」とは魅力的であり、『写楽殺人事件』などは面白く読んだ。しかし学術的には阿波藩の能楽師斎藤十郎兵衛だとほぼ確定しており、世界三大肖像画家と称されたこともないなど前提が最初から間違っていたのだ。なのに売れる話題を求めるマスコミは正しく報道せず、逆に繰り返し煽り立てたのが実態だった。事実を事実として伝える本が、東京の大手でなく福岡の小出版社から出たことがブームの愚かさを証明している。2025/02/03
8番らーめんR
9
写楽ブームとはいったい何だったんだ?を膨大な資料、文献等から検証し、とりまとめた労作。ポーの「マリ―・ロジェエの怪事件」の引用で締めくくられる。要約すると「マスゴミの目的は真実を追求する事よりもむしろセンセーションを作り出すことである」。昨今のSNSの興隆とマスゴミの衰退を思うとけだし慧眼である。※個人的には島田荘司「写楽 閉じた国の幻」における「写楽は●●説」に驚いた記憶があるが、その時はもうすでに定説が固まっていたのね。2025/01/14
agtk
4
写楽の謎解きではなく、写楽ブームの謎に迫る本。写楽ブームがどのように作られたのかを詳細に述べられている力作。第一章のクルトのあの有名な「世界三大肖像画家」は存在しないというのはかなりの衝撃。どの写楽本を読んでも書いてあったから疑ったことがなかった。写楽=斎藤十郎兵衛なのは明石散人さんの著作で理解していたが、第二章三章でも知らないことがあまりに多く、理解が追いついていない。再読、再々読してみたくなる良書。2025/01/05
於千代
3
「謎の絵師」とされる東洲斎写楽について、①世界三大肖像画家説、②写楽別人説、③斎藤十郎兵衛の正体、の3点から考察する。 全体を通して、メディアや著名人の写楽に対する「謎」や「異端」といったイメージ先行の語り口が、史料や先行研究の冷静な検討をないがしろにし、結果として写楽ブームが「思い込み」の集積であったことを示している一冊。2025/05/20
Go Extreme
3
ドイツの心理学者ユリウス・クルトー「世界三大肖像画家」の一人と評価 ベラスケスやレンブラントと並ぶ存在として再評価→国際的関心高まる 不明な正体: 様々な仮説があり・「斎藤十郎兵衛」説が有力視 阿波藩の能役者とする説が浮世絵の背景理解に重要 作品数が少ない→希少性が価値↑ 研究の進展: 1980年代以降研究進展→出版物やメディアの扱い増加 商業メディアがイベントや出版物→一般の関心拡大 別人説: 写楽が複数の人物による作品→研究者間で論争 過去の料の再評価→研究の方向性に影響 商業メディアと研究の関係2025/02/04