内容説明
抗日戦争の前線指揮官阿〓(アーロン)(国民党軍少佐)が描いた南京陥落の真実。毛沢東政権下で投獄され、押収された幻の叙事文学。完全邦訳版ついに完成!
著者等紹介
阿〓[アーロン]
本名、陳守梅(チェンショウメイ)。1907年杭州市生まれ。国民党軍の将校として抗日戦争に従軍し、1937年の上海防衛戦で顔面下部貫通銃創を負う。文芸評論家で文芸誌『七月』の主編だった胡風と知り合い、国民党の将校でありながら共産党系の文学グループで極秘裏に活動。延安抗日軍政大学で学び、1939年西安で長編小説「南京」を執筆。共産党政権成立後、毛沢東の文芸路線に抵触し1955年の「胡風冤罪事件」に連座、天津監獄に12年間監禁され1967年獄死した。1980年に名誉回復。1987年「南京」が友人たちの手によって『南京血祭』と改題されて書籍化
関根謙[セキネケン]
1951年福島県生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。中国現代文学専攻。『抵抗の文学』で文学博士。慶應義塾大学文学部長を経て『三田文学』編集長に就任。慶應義塾大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かふ
17
阿壠は軍人作家だったので、「南京陥落」を中国国民軍の視点から、一人の主人公(個人)の視点というより、国民軍(群像劇)の各部隊の物語をルポルタージュ的に描いている。それは火野葦平『麦と兵隊』を踏まえて抗戦するためだった。文学による抗戦?「南京陥落」という事実を、それでもまだ抗戦の火は消えていないのだという中国国民の尊厳や抗戦を鼓舞するためでもあった。破れていった国民軍は軍事的失敗もあり、近代兵器(戦車や爆撃機)vs.人民の戦争のリアリティを幾分ヒロイニック的に描いている。日本に抵抗する文学からの呼びかけ。2021/07/23