出版社内容情報
「ジョニー・デップ 製作/主演 映画」『MINAMATA─ミナマタ─』原案写真集 待望の新版刊行!
自ら体験した「真実」を追い求め、ドキュメンタリー写真を芸術の域にまで高めた伝説の写真家W. ユージン・スミス。1975年に米国で刊行された写真集『MINAMATA』は、写真史上最も偉大なフォト・ジャーナリストの代表作であり、最後の仕事として知られています。
この写真集を原案としたジョニー・デップ製作/主演の映画、「MINAMATA─ミナマタ─」が9月23日(木・祝)より全国公開!
これに先立ち、長らく絶版となっていた日本語版『水俣』の新版を刊行いたします。
巻末には書き下ろしエッセイ、水俣病関連年譜、歴史解説、医学報告などの最新資料を収録。高度経済成長期の日本に起きた四大公害事件の一つである水俣病を、現地に3年以上暮らし、当時の妻アイリーンとともに命を懸けて取材。水俣の真実に迫る不朽のドキュメントがいまここに蘇ります。
目次
奇病
伝統と変遷
暮らしの環
人間の破壊について
怨の旗
裁判
ついに面と向かって
カナダ 地球の裏側
再び故郷へ しのぶ 拾い集め生きる命
感謝―W.ユージン・スミス〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベーグルグル (感想、本登録のみ)
47
高度経済成長期の日本に起きた四大公害事件の一つである水俣病を、現地に3年以上暮らし、当時の妻アイリーンとともに命を懸けて取材。水俣の真実に迫るドキュメントの新版。ジョニー・デップ主演の映画の原作。ここに真実が語られている。そして水俣病の問題はまだ解決していない。2022/04/14
ショア
23
映画「MINAMATA」を見てジョニー演じるユージンの実際の写真を見てみたくなった。写真だけでなく滞在した3年間の水俣の生活と闘争の様子を文章でも記録。発病した子供の脳細胞がスカスカな写真。闘争の真っ黒な旗に「怨」の文字。チッソよ「自分のしたこつの始末は自分でつけんばんたい。しまいまでなあ」住人の水俣弁が迫り来る。ユージンは日本での取材中にチッソ従業員から暴行を受けその影響で数年後に脳出血で59歳の若さでこの世を去る。水俣の水銀公害を世界に知らしめた魂の写真集。今だに認定されず苦しみ続けている人々がいる。2025/02/23
まると
23
映画「MINAMATA」を見て、ユージン・スミスの「入浴する智子と母」の本物を見たくなって衝動買い。焦点の合わぬ目を見開き、物を言わぬ胎児性水俣病の少女・智子と、彼女を湯舟で抱く母親。その表情は、聖母のような優しさに満ちている。映画でも涙腺が壊れてしまったが、魂を揺さぶられ、やはり涙を抑えずにいられなかった。胎内でメチル水銀を吸収し、母体にもその後に生まれた子供たちにも毒を残さなかった智子をお母さんは「わが家の宝子」と言って慈しんだという。写真を撮ったユージンもすごいが、撮らせたお母さんが誰よりも偉大だ。2021/11/06
ナハチガル
17
『苦界浄土』を読んで手に取った。写真は全部見たが、文章は半分ほどで挫折。あまり入って来ない文章だった。原書の方がよかったかもしれない。一番印象に残ったのは、病気の原因を突き止める手掛かりになったという「日本の母親たちの習俗—なくなりつつある習俗だがーへその緒を箱か何かにしまっておく習わし」。外国人の書く文章の中で見て、初めてそれが世界的に珍しい?風習だったのかと気づく。まだ実家に私のへその緒が、たぶん置いてある。2022/01/26
kan
15
アートとジャーナリズムの融合。生の神聖と冒瀆。ユージンとアイリーンの紡ぎ出す言葉と写真が融合し、受け止める側の私に重苦しい強さでのしかかってくる。一方で、水俣での闘いにジャーナリストとして寄り添い共に時を過ごした人ならではの視点や空気が作品に漂い、根底にある優しさや慈愛も感じられる。映画MINAMATAを観て、石井妙子の「魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣」とこちらの写真集を教えてくださった読書メーター友さんに感謝。2021/11/29