内容説明
揺れる60年代、スペインの人々と共振しながら自らを見つめた、若き写真家の「旅」の軌跡。1960年代、自らの生き方と写真表現を見つめ直すため、奈良原一高は日本を出てヨーロッパで思索の日々を送ります。深く心奪われたのはスペイン。祭りに歓喜し、闘牛に命を賭け、激動の時代をしたたかに生き抜く人々―彼らに共振しながら撮られた、圧倒的にダイナミックな“スペイン 偉大なる午後”。本書はそのシリーズからモノクロ写真120点を厳選し、親友のグラフィックデザイナー勝井三雄とのコラボレーションにも注目。同時期に撮影された“ヨーロッパ・静止した時間”の名作15点も加え、若き写真家の「旅」の軌跡を、半世紀ぶりにたどります。
目次
プロローグ 遠い都市―シリーズ“ヨーロッパ・静止した時間”より
第1章 祭り―シリーズ“スペイン 偉大なる午後”より「フィエスタ」
第2章 町から村へ―シリーズ“スペイン 偉大なる午後”より「バヤ・コン・ディオス」
第3章 闘牛―シリーズ“スペイン 偉大なる午後”より「偉大なる午後」
論考 1960年代、奈良原一高の仕事と旅の軌跡(塚田美紀)
再録 ヨーロッパ、スペインへの旅をめぐるエッセイ(奈良原一高)
特集 奈良原一高と勝井三雄―『スペイン 偉大なる午後』と60年代のコラボレーション
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なる
12
いくつかに章立てされた写真は色々な街をめぐった足跡とともに切り取り方の妙を浮かび上がらせる。ゴヤの巨人を思わせるような像や群がる虫のように見える広場の鳥たち。独特の陰影はモノクロでありながら太陽の熱を感じずにはいられない。祭りに熱狂する市民の熱量。コロシアムを満たす狂乱の渦。舞台は街から村、荒野へと広がり、最終的にマタドールに集結する。かつての代名詞だった闘牛は今ほとんど行われていないらしい。時代的に当然なりうる流れではあるけれど、興行はともかくモニュメントくらい見ておけばよかったな。2020/07/18
ぬまけん
0
A2021/01/23