内容説明
声なき人びとの終わりなき戦争。真実はいつまでも覆い隠すことはできない。20世紀は「戦争の世紀」であった。しかし、21世紀を迎えてもなお、世界のどこかでひとときも収まることなく続き絶えることがない。戦争の悲惨な傷痕に今なお苦しむ声なき民に向きあい、平和の尊さを問いつづける大石芳野。約40年にわたり、戦争の犠牲となった人々を取材し、いつまでも消えない戦禍の傷にレンズを向けた作品160点収録。
目次
第1章 メコンの嘆き(ベトナム;カンボジア;ラオス)
第2章 民族・宗派・宗教の対立(アフガニスタン;コソボ;スーダン;ホロコースト)
第3章 アジア・太平洋戦争の残像(旧日本軍731部隊;広島;長崎;沖縄)
著者等紹介
大石芳野[オオイシヨシノ]
写真家。戦禍や内乱など困難な状況にありながらも逞しく誇りをもって生きる人びと、そして、土着の文化や風土を大切にしながら生きる人びとが主なテーマ。受賞:土門拳賞、エーボン女性大賞、紫綬褒章、JCJ賞、他(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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15
めくってもめくっても綺麗事が1㎜もない。産まれて初めて<戦争>に触れた気がした。原爆資料館でも感じなかった気持ち。自分の生を恥じた。想像力が急き立てる。ごめんなさいが涙と一緒に溢れてくる。戦争はなくならない。安全地帯からそう思っていた私を恥じる。戦争は、儲かる。人の命がお金に替わる。産まれたこと、それだけで僥倖だと安全地帯で笑う自分が恥ずかしい。ただただ、恥ずかしい。第三者は語れない。彼らの眼差しの意味を。ただひたすらに、眼差しに射抜かれる。どんな言葉もここでは役に立たない。私にできることを、しなくては。2022/09/06
balanco
3
春に観た展示が記憶に残っていたのであらためて写真集を手に取った。2019/12/24
の
3
戦争の傷痕に苦しむ人々の写真集。第二次世界大戦後も、ベトナム戦争、コソボ紛争と世界各地で戦争は勃発し、非戦闘員も被害を受けている。地雷や爆撃で身体を損傷した人だけではなく、戦争で家族や家を失い悲しみに暮れる人々が、心につらい記憶を持ちながら戦後の社会で生きてゆく強さも写真に収められている。表面的には平和が戻った場所に生きる人々を訪ね歩き、会話し、彼らの心の中にある終わりなき戦争の姿を映し出す。ぱっと見ただけでは通り過ぎてしまいそうな写真に、悲しみの記憶に寄り添う写真家の誠実な思いが付け加えられている。2019/07/23
このみ
3
東京都写真美術館での同名の写真展を観た。大石芳野さんの長き活動。ベトナム、カンボジア、シリア、コソボ、そして広島、長崎、沖縄。ホロコーストの現場である、アウシュヴィッツと731部隊について。「戦火」ではなく「戦禍」。禍は終わってはいない。禍中の子どもたちの写真も多い。何度も訪問し対話があったうえでの撮影とのこと。学校に通えるようになった、自宅に戻ることができたという写真には安堵する。何ひとつ解決した訳ではないことはわかっているのだが。写真の向こうの眼差しが問いかけるものに答えを持たない苦さを噛み締めて。2019/04/30
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- 和書
- ダブリンの市民 岩波文庫