出版社内容情報
那須耕介[ナスコウスケ]
著・文・その他
目次
家の中の余白
「能力」は本人のものか?
ありあわせの能力
もう一つのゴールデン・スランバー
つたなさの方へ
謝らない人
「忘れたこと」はどこに行ったか?
羨望と嫉妬
著者等紹介
那須耕介[ナスコウスケ]
1967年生まれ。京都大学教授。専門は法哲学。2021年9月7日逝去。享年五十三(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
livre_film2020
30
2時間とかからずに読み終えてしまった。清水のような本だ。装幀とレイアウトは噂のクラフト•エヴィング商會。手に馴染んで読みやすい、素晴らしいお仕事だ。内容に関しては、今敏が死期迫るなか書いたブログのような温度を感じた。1日ずつ死へ向かってゆく。それでも、思考が死ぬわけではない。我々人間がうまく生きれるかどうかは、詰まるところ受け止め方がうまいかどうかなのかもしれない。信じられないような悲しみや怒りは予告なく押し寄せてくる、災害のように。それを打ち返すのではなく流す。那須さんは最後にそう伝えたかったのかも。2024/02/15
T
15
読書会で紹介させれていた本。わずか100頁あまりの薄い本の中に、静かながら鋭い洞察による随筆が15篇。どれも深く自分の振る舞いを振り返させられる内容。特に印象的だったのは、覚えている夢は他者と分かち合うことで消化する人間的な営みを含むものと洞察する篇、本来余計なことである「遊び」の大切さについて書かれた篇、無敵、完璧ではなく、転び方を心得ることの大切さを書いた篇など。どれも余白のある関係の中で、豊かさを得るような話であり、力の入りすぎた私たちの強張りを解くような本である。装丁も美しく、手触りも心地よい。2023/09/10
Kp
13
京都大学の教授(法哲学が専門)による随筆。その中のひとつに「能力は個体とその環境との支え合いの産物」という言葉が出てくる。つまり、人が上手く歩けるのは、個体の能力だけではなく、安定した地面という環境があるからであるという。誰かに褒められた時、実は、周りの人の助けのおかげなのかも、と気付く事ができるだろうか。それが大切な気がする。自分の能力は、自分だけの力で発揮されるものではないと思える心を持ちたい。2024/05/05
Yuka
8
法哲学者の那須耕介教授が亡くなる前まで綴っていた京都新聞の連載と未公開記事の15篇の随筆がまとまった本。 薄く小さい本で、開けば余白もたくさんあるのに、そこに綴られた言葉の一つ一つが厚みも重みもあって、できるだけ無音で、できるだけ一人の時間で、じっくりと体内に響かせたいと感じる言葉ばかりだった。 今、忘れたくないと思った言葉に印が必要だと思って、普段は随筆にはつけない付箋がたくさんついた。 きっと、改めて読んだら全然違うところに付箋がつく気がする。 素敵な本に出逢わせてくれた友人に感謝。2024/02/21
たっきー
8
早逝された、法哲学専門の京大教授による随筆集(京都新聞での連載をまとめたもの)。一度に読んでしまったけれど、本当は一編ずつよく味わいながら読んだ方が良かったかもしれない。家族の関係性、自立と人の能力について書かれているものが特に興味深かった。2023/01/08