内容説明
昭和初期の上州の山村を舞台に、現代では失われてしまった、美しい風景、自然への畏怖、家族や近隣の人々のぬくもりを鮮やかな筆致で描く。少年はまっさらの心で、いくつかの出来事を通して成長する。そして、死の淵から還ってなお反骨の精神を失わない老人との絆を通して、自らの生涯を切り開いていく「思考の礎」ともいうべき精神性を養ってゆく。
著者等紹介
丸橋賢[マルハシケン]
1944年、群馬県生まれ。東北大学歯学部卒業。同学部助手を経て、1974年、丸橋歯科クリニック開業。1981年、「良い歯の会」活動開始。2004年、群馬県高崎市に「丸橋全人歯科」を開設。現在、丸橋全人歯科理事長。アメリカ歯内療法学会、日本歯内療法学会を中心に、日本全身咬合学会、日本口腔インプラント学会等で活動したが、現在は退会し、全人歯科医学に全力を投入している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えみ
42
山に聞こえる静寂の音、雪の冷たさや夏の香り。一章一章じっくり味わうように読めば、読んだ分だけ深く惹き込まれて好きになる。自然の中で育まれる生命と失われる命。滅多に意識しない“生きる”という当たり前をより近くで意識し、受け止めながら成長していく男の子が目に映すもの。どれもこれも真っ直ぐに捉える清らかさが眩しい。発見、驚きは愉しく心豊かに。そして…淋しい、哀しい、悔しい、はそれ以上に心を豊かにしてくれる。素直にそう信じられる物語。春夏秋冬それぞれの顔を道しるべに、季節を渡る暮らしを駆け抜ける風と共に触れた。2025/07/18
森の三時
27
描かれているのは小学校に上る前の1年間のことだからおそらく5歳から6歳の頃だろうか。戦後間もない上州の山村で暮らす主人公の成長の物語である。現在の我々にはもはやこんな少年時代は過ごせないと思われた。昭和の作家さんかと思いきや80歳の歯医者さんのデビュー作とは驚きました。昭和にはこうした少年時代があったと書き残しておきたかったのかなと思いました。2025/03/24
えりまき
16
2024(265)昭和初期の上州の農村に暮らす少年・直文。罠でにかかったウサギの死、作造じいさんの妻の死、孫の死。「じいさんは死んでも立ち上がる姿を見せたかったんだ。何も無くても立つことを教えたかったんだ。」。子供か感じる死の恐怖や、自然への関わりに懐かしさを感じる本。 2024/09/21
wakazukuri
4
昔話みないな感じで読んだ。いつの話なのだろうと思いつつ、小学校に上がる前の子供にしてはしっかりしているし、尚文と隣のじいさんの温かいふれあいが読んでいて心地よい。昭和の昔の田舎の暮らしを思い浮かべながら読んだ。2025/04/30
ぱぴぷぺぽ
3
**** 愛情をいっぱい受けて素直に育つ少年。 自然の中で命の尊さを知り、雪道で迷っても対処できる知恵を身につけた。心豊かな物語。 2024/12/08