内容説明
昭和初期の上州の山村を舞台に、現代では失われてしまった、美しい風景、自然への畏怖、家族や近隣の人々のぬくもりを鮮やかな筆致で描く。少年はまっさらの心で、いくつかの出来事を通して成長する。そして、死の淵から還ってなお反骨の精神を失わない老人との絆を通して、自らの生涯を切り開いていく「思考の礎」ともいうべき精神性を養ってゆく。
著者等紹介
丸橋賢[マルハシケン]
1944年、群馬県生まれ。東北大学歯学部卒業。同学部助手を経て、1974年、丸橋歯科クリニック開業。1981年、「良い歯の会」活動開始。2004年、群馬県高崎市に「丸橋全人歯科」を開設。現在、丸橋全人歯科理事長。アメリカ歯内療法学会、日本歯内療法学会を中心に、日本全身咬合学会、日本口腔インプラント学会等で活動したが、現在は退会し、全人歯科医学に全力を投入している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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森の三時
27
描かれているのは小学校に上る前の1年間のことだからおそらく5歳から6歳の頃だろうか。戦後間もない上州の山村で暮らす主人公の成長の物語である。現在の我々にはもはやこんな少年時代は過ごせないと思われた。昭和の作家さんかと思いきや80歳の歯医者さんのデビュー作とは驚きました。昭和にはこうした少年時代があったと書き残しておきたかったのかなと思いました。2025/03/24
えりまき
16
2024(265)昭和初期の上州の農村に暮らす少年・直文。罠でにかかったウサギの死、作造じいさんの妻の死、孫の死。「じいさんは死んでも立ち上がる姿を見せたかったんだ。何も無くても立つことを教えたかったんだ。」。子供か感じる死の恐怖や、自然への関わりに懐かしさを感じる本。 2024/09/21
wakazukuri
4
昔話みないな感じで読んだ。いつの話なのだろうと思いつつ、小学校に上がる前の子供にしてはしっかりしているし、尚文と隣のじいさんの温かいふれあいが読んでいて心地よい。昭和の昔の田舎の暮らしを思い浮かべながら読んだ。2025/04/30
ぱぴぷぺぽ
3
**** 愛情をいっぱい受けて素直に育つ少年。 自然の中で命の尊さを知り、雪道で迷っても対処できる知恵を身につけた。心豊かな物語。 2024/12/08
パーやん
2
清々しい...でも僕の期待とは違うかな。 直文は御雷伝山の山麓、日向村に暮らす。もうすぐ小学生になるが、日々の暮らしの中で様々な「初めて」を経験する。いまでは感じることも叶わない自然の中での清々しさです。 初めて罠で獲ったウサギが愛しくなるが、翌朝、縁側に吊された肉塊を見つけた悟り。 隣り村の従兄弟を訪ねた帰り道、雪の残る山で道に迷って身の危険を感じた怖い思い。 慕っている「お姉さん」が、お嫁にいくと知らされて景色が変わった思い...等々。2025/04/23