読書の日記

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  • サイズ B6変判/ページ数 1120/高さ 18cm
  • 商品コード 9784909242020
  • Cコード C0095

出版社内容情報

本を読む人と、その生活。東京・初台の〈本の読める店〉「fuzkue」店主、初の単著にして読書の喜びに満ちた圧巻の1100ペ…--------------------------------------------------------

本を読む人と、その生活。

このような365日の記録が、かつてあっただろうか。

東京・初台の〈本の読める店〉「fuzkue」店主、

初の単著のして読書の喜びに満ちた圧巻の1100ページ。

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◇推薦のことば



すべての文章に当てはまるわけではないが、この人の文章はまさに、文は人なり、才

気煥発、多動症的バイタリティーを存分に現していて、「ぜひ会いたい!」とも思う

し、「会わなくてここにある文章でじゅうぶん」とも思う。

こういう高い能力を持った人は、世間では成功すると思われがちだが、その高さの質

が世間と折り合わないために、「労多くして益少なし」というか、端からはわざわざ

見返りが少ないことばかり選んでいるように映る。

私はこの人に似た人を二人知っている、一人はアルチュール・ランボーで、もう一人

は樫村晴香という70年代からの私の友人だ。

二人とも浅い知り合いは、「もっとうまくやればいいのに(あいつにそれができない

わけないんだから)…」と残念がるだろうが、よく知る友人は、これが彼の精一杯の社

会との接触であり、彼にその気がなかったら自分は彼と交遊することがなかったと、

年とともに感じるようになる。

凡庸な人には彼の能力も魅力も、アフリカの砂漠での後半生が見えず、ただ天才詩人

としか思われず文学青年(死語)の崇拝の対象でしかない、そういう、ランボーのアフ

リカでの日々を思わせる、これはそういう文章で、私の気持ちを掻き立てずにはいな

い。

――保坂和志(小説家)



ここに収録された日記よりずっと以前の日付のものだっただろうか、阿久津隆は「ス

トラグルという言葉が好きだ」というようなことをたしか書いていた。ぼくは「スト

ラグル」という語感をすぐに気に入り、真似して使ってみようと考えたことを覚えて

いる。彼の日記をだらだらと読み進めているとふとした語彙がとてもフレッシュにみ

えることがある。

去年秋にようやく映画『オデッセイ』を観て、続けてすぐに原作『火星の人』を読ん

だ。火星に一人取り残された植物学者マーク・ワトニーが生存の証拠として書き続け

た日記。

火星にマーク・ワトニーがいて、そして初台に阿久津がいる。初台のマーク・ワト

ニーこと阿久津隆……よくわからないけどたぶんそんな感じ。二人がしばしば記す、い

かに今日自分は疲労しているのかという描写が妙に楽しい。彼らのストラグル=悪あ

がきの記録を愉快に読めるというこの幸福。二人とも日々のあれ…

阿久津隆[アクツタカシ]
著・文・その他

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

40
高橋源一郎や、あるいはもっと保坂和志が好きな読者ならまず間違いなくハマれる一冊。過剰な引用癖はまあご愛嬌といったところだけれど、一冊一冊の本を丁寧に読み解いていく姿勢は一読者として見習いたい。指が脱臼しそうになるほど分厚い本なのだけれど、こちらを引き摺りこむだけの力はある。それでいて暑苦しいところがない、良い意味で頑張っていない本だと思う。地味ながら良い仕事……それはこの著者が偏愛するエクス・リブリスの装丁にも似ている。ただ、保坂に甘過ぎるのはちょっとな……という気も。何気に毒を備えた書き手として期待する2019/02/06

踊る猫

33
面白い。スリリングな面白さというより、ダラダラ続くのんびりしたトーンに乗せられてこのまま延々と読み続けたいと思わせられてしまう。まさに保坂和志の小説を読んでいる時に感じるようなある種の「だらしない」快楽を感じる読書を味わうことができる。なので1000ページを超えた本なのだけれどぜんぜん苦痛にならない。このまま著者の(時に暇に苦しめられる)日常に付き合い、平穏な日々を伴走したくなる。これが著者の人徳なのだろう。だが、そんなとぼけた日常の中に著者ならではのトゲのある考察が仕込まれているところも見逃せないと思う2022/07/17

踊る猫

31
阿久津隆の日記は面白い。だが、それはワクワクするエンターテイメントとしての面白さ(悪く言えば「あざとい」「きつい」「狙った」面白さ)ではない。むしろここにあるのは一見すると毒にも薬にもならないマイルドさを保ったまま、だがその中に確実にこちらを中毒にさせる「旨味」「コク」を秘めている魔性の魅力だ。だからここで展開される日常の変哲もない記録の連続は実にその知性によって読ませ、そのフックの効いた筆致によってこちらを同じく思索に誘う。おそらく、この本を読んで自分も読書をしたいと考えない読者こそレアではないだろうか2024/08/11

Maki

30
買ったらすぐ読むひと。積ん読なし、2~3冊を併読、家で、カフェで、自身の店で、餃子屋で、居酒屋で、公園で…。食べながら、飲みながら…ウィスキーウィスキーチョコレートヘミングウェイ。ビールビールハイボール読む食べるといった具合に。お店の客数で気分が上がり下がりし、懸命に生きてるひと。本を読み喜び、泣き、感動する、素直なひと。とても気持ちのいいひと。2020/08/22

踊る猫

27
ひさびさに読み返し、そして阿久津隆がなぜ保坂和志を特権的な作家として私淑するのかわかった気がする。保坂にとって小説を書くことが単なる作品生成を超えて自分自身をこそ変成させ・成長させるいとなみ、つまり殻を破ってどんどん変化していくいとなみであったように、阿久津隆にとってもフヅクエを経営したり本に馴染んだりする営為をほかでもない日記に結実させることが変化し成長していく営為の謂ではないかな、と思ったのだ。だから一見するとワンパターンな日々が続くようで、そのじつ阿久津隆という書き手は己を書き換え普段に前進し続ける2025/04/04

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