内容説明
被害者の「命の証」は必ず現場にある。警察署の刑事部門一筋、27年―。約4000体の「変死体」と向き合ってきた所轄の鑑識係が捧げる、死者への黙祷。捜査員の心が動いた30事件。危険な死体描写―衝撃の刑事鑑識ノンフィクション。
目次
序章 命の証(浴槽で発見された小5女児)
第1章 殺人(タクシー強盗殺人;外国人妻による夫絞殺 ほか)
第2章 事故(巨大トンネル火災事故;ため池で溺死した4歳女児 ほか)
第3章 自殺(高層マンションからの飛び降り;高度に腐敗した首吊り死体 ほか)
第4章 検視と死因(腐乱死体とDNA鑑定;竹串が証明した刺し傷の謎)
終章 退職の朝
著者等紹介
村上和郎[ムラカミカズロウ]
元大阪府警察警部。昭和34(1959)年、大阪府大阪市生まれ。奈良市立一条高等学校卒業。昭和54(1979)年、大阪府警察の巡査を拝命。翌年に配属された枚岡署の警ら課(現・地域課)交番勤務、直轄警察隊を経て、以後は所轄の豊中署、東成署、西成署、布施署、松原署、富田林署の刑事課捜査員や鑑識係として約27年勤務。平成25(2013)年からは吹田署と八尾署の留置管理課をつとめ、平成29(2017)年に健康上の理由で依願退職。在職期間は約38年。現在は飲食店運営会社に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
65
練炭自殺の第二発見者になったことがある。第一の人に「路傍駐車の中で人が死んでるみたい」と言われて覗くと、爪が真っ黒で動かない人と七輪が見えた。パトカーが何台も到着し事情を聞かれながら、車内を調べている人が鑑識係かと眺めていた。殺人、事故、自殺などで生じた変死体の調査を「納棺師」と呼ばれるほど続けた元鑑識係の回想は、ミステリなど足元にも及ばぬ人間の悲惨さに満ちている。そんな死体となり果てた人の無念を晴らすという知りたくないが誰かがせねばならない、そして自分には絶対できない職務を忠実に続けた著者に頭が下がる。2021/05/18
看守のバウライオン
1
大阪府警で長年鑑識畑を歩んだ警察官の著書である。 刑事課のリアルが詰まっている本。生々しい… 変死の匂いや腐敗したご遺体から死因を解明する仕事も刑事に求められる。 私が印象に残ったのは司法解剖の母数の少なさ。検死だけで本当に他殺か病死かなどを判断するのは著者も疑問視していたのでなるほどと考えさせられた。 変死体に興味のある方は読んで損はないと思う。 硫化水素の事例はちょっと嫌でした。 鑑識の警察のリアルが詰まったいい一冊だと思う。 2025/05/11
禿頭王
1
鑑識係が出くわした変死体にまつわる事件録。ものすごい大事件やトリックが出てくるわけではありませんが、それだけに監察係が日常的に変死体と向き合っていることが伝わってきます。そんな鑑識係をして、何度も繰り返し描写せざるを得ない蛆虫や死臭は、よほど強烈なのだろうとゾッとします。法医学者の上野正彦が著した『死体は語る』とは、また違った趣きがありました。2025/04/22