内容説明
戦前日本は、軍の外交容喙による権力の分裂という問題を抱えていた。シビリアン・コントロールのほころびが見える現代日本において、これは過去の話として片付けられるのであろうか。本書は、外地駐留軍としての関東軍とその問題点を追及する政治学者・吉野作造を共に追いかけ、近代日本を変えた満洲事変への道を再検討する。両者の国際秩序構想などを中心に、大正デモクラシーをペンで牽引した吉野と剣の力で時代を動かそうとした関東軍との攻防を描き出す。
目次
はじめに 吉野作造と関東軍
1 日露戦争期から第一次世界大戦まで
2 第一次世界大戦末の対中国政策とシベリア出兵
3 ワシントン会議
4 奉天軍閥の危機
5 国民革命期の対満蒙政策
6 満洲事変
おわりに 「デモクラシー」と軍部
著者等紹介
藤村一郎[フジムライチロウ]
鹿児島大学総合教育機構准教授、政治学および初年次教育担当。日本政治思想史/日本政治外交史専攻。博士(政治学)
後藤啓倫[ゴトウヒロミチ]
九州大学大学院法学研究院協力研究員。日本政治外交史専攻、博士(法学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カラコムル711
1
素人には、満州事変の研究などほぼ研究し尽くされたかと思えるが、本書を読んでその意味がより鮮明に理解できたように思う、本書の手堅い分析である。なぜ関東軍があのような行為に及んだのか、その原因となったのが1924年の中ソ協定だったようだ。関東軍の存在の根拠がこれで覆りかねないものだったことだ。もともと条約の裏付けのない満蒙利権、この利権の中身は実は本質的に軍の利権であったことだ。だからこそ危険を冒して関東軍は謀略を行った。政党がこれを阻止するには命がけで、これに抗するものは吉野も含めいなかった。 2020/02/20