内容説明
第35回富田砕花賞受賞。第3回西脇順三郎賞受賞。第75回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。最後に満月を見た日のことは覚えていないけれど 夜になると見るだろう月の姿を昼のうちに思い描くことはできる わたしにも透き通る触手があればいいのに そうしたら進む道などは光の方向でしかなくなるから。水面に落ち込んだかつての月明かり、今は亡き人が昔飼っていた犬の鳴き声、夢うつつの気水域に立ち現れるさざなみのような声や断片を拾い集めるように書き継がれた32篇。詩人・野木京子、第6詩集。
目次
汽水域
西日の神様
秋の庭
空の河原
棄てられた声 裏山を越えたところ
心の奥であるような気もする
声が聞こえるほうへ
球根
庭の片隅で
常世の実
十四日月と海
犬も鳥も
翳りの息
花崗岩ステーション
空中映画館
ときには透明のようにも見え ひとの面影がうごめいている
どこにもいなくなったときには光のなかにいる
きゅい ぎゅい
ピシャッ
家を訪ねる
クル ミの実のなかに橋が
小舟と声
窓辺
樹木も叫びの粒を空へあげる
音無し
廃屋の月
つぶつぶ
世界は薄い氷の上に乗っているのに
水母の日記帳
どこにもない植物園
お山へ行くまでに
じぐざぐ
著者等紹介
野木京子[ノギキョウコ]
詩人。熊本県八代市生まれ。2007年に『ヒムル、割れた野原』(思潮社、2006年)で第57回H氏賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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