感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イコ
9
唯一無二。1984や華氏451度と並んで評されても良いくらいに、ディストピア世界が描かれており、それが現実世界がすぐにでも転がり込みそうなくらいに現実と肉薄していて、それが本書の思想とも相まってエンタメ性もあった。クーンツの本にもエンタメある物語と書いてあったので、アメリカでは手に取りやすい小説なのだろう。エディーに救いが無いのは悲しいし、ダグニーを取り巻くメロドラマにも蚊帳の外で、あの世界と決別する力がない者は滅びなければいけないらしい。多くの読者が滅びる側なのが、本書に批判が多い理由だろう。2023/10/29
Vincent
8
第3部では伝説の男がついに登場。「私は決して他人のために生きることはなく他人に私のために生きることを求めない」。ニーチェ的でもあるこの崇高な言葉を常に戒めにしたい。やや楽観的な結末だけど一度は読んでおきたい良い長篇思想小説でした。 2023/11/05
スクワッター
6
★★★★★★ 「アイン・ランドを読まない人生なんて!」第一部の帯に書かれていたメッセージは、決して誇大広告ではなかった。この本に出会えて良かった。間違いなく、私の精神性に影響を与えた。懸命に生きる人の背中を、ガツンと押してくれる本。これほど人間の可能性を信じ切った作品はない。非常に長い小説だったが、演説含む壮大なメッセージは、この長さがなければ腹落ちしきらなかったと思う。政治や経済の思想の方面から語られ誤解されまくっている小説だが、私には生き方や心の在り方等、個人の内面への鼓舞の方が、より印象的だったな。2023/09/28
mim42
6
小説としては三流、思想としては二流、しかし、インパクトは一流。とにかく長すぎる。不自然すぎる。固すぎる。埴谷雄高「死霊」と似たような読み心地、というか疲労。💲の煙草の魅力、ドM娘とイケメン王子たちのプレイ、わかりやすい正邪の分岐線。掲げられたのは、私利私欲こそ正義、人間の理性こそ正義という道徳。私は少しだけ同意。否定されたのは、社会主義、ケインズ主義、そしてキリスト教的価値観。ここは概ね同意。2019/08/25
roughfractus02
6
国家や企業の中央集権管理による鉄道の老朽化が資本主義の衰退を表現する一方、このディストピアから逃れて資本主義を自由にするためにストライキを起こす頭脳労働者なる存在は、作者の中の自由と資本主義を結ぶ市場参加者の理想を表現する。彼らのアイデアや知識、理性的判断が市場を動かすという考えには、起業家精神を育む米国の背景が見える。第三部では物語の人物たちに破滅や死が訪れる。が、最後の100pに及ぶ理性と個人の独立性を謳う演説を読むと、作者の自由放任的資本主義観が、後のインターネット空間に託されることに気づかされる。2018/05/08