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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
道楽モン
26
1957年当時、この作品はリアルタイムの架空物語であった筈だ。ところが現実のアメリカは、この作品に影響を受けた、後に大富豪となるイノベーターたちの使命感と権利意識によって極端な富の偏在を招くこととなる。共産主義化するロシアから逃れアメリカにたどり着いた女性作家の産み出した小説が、リバタリアンや新自由主義者にとっての正にバイブル的な存在であったことは、ビル・ゲイツやトランプ、ジョブズの初期衝動から派生した大企業がタックスヘイブンに本社を移し、巨万の富を独占していることが何よりの証明だ。文庫全3巻の第1巻目。2023/09/12
nekozuki
18
3部作第1巻。タッガート大陸横断鉄道の女性経営者ダグニーが困難に立ち向かいながら、路線の再建を目指す姿を描く。著者は「保守の女神」と呼ばれているそうで、難解であるもののメッセージ性の強い著作は米国の様々な財界人に影響を与えているとのこと。公平性の名の下に、独占的利益をあげるタッガートを阻む法律が次々と生まれる中で、情熱的に鉄道の運営を続けるダグニーの姿には、日本の経済小説では見られない、偶像としての力強さがある。アメリカの経済成長に対する思想の根底を感じることができる作品。2019/11/17
ガオシャン
16
作者の思想がバチバチです。3巻中の1巻で500ページもあったのに、今のところ話を動かすキャラの思想が2種類しかなくて、作者の思想vs作者が叩きのめしたい思想、になってる。両者とも、賢さと視野の狭さが釣り合わないし、お互いの思想に一切近寄らない。極端すぎる。65年前の作品なのでわからないけど、今後、資本主義の中で勝ち抜くことこそが社会貢献で正義の主人公達と、本当の意味で福祉こそ正義みたいな人たちとが戦ってほしい。世の中にはどっちも必要だと思うから。あと、ロマンスシーンがほんとに何言ってるかわからない。2022/01/06
てれまこし
12
邦訳は予約に行列ができてるが英語版が空いてたのでそっちを借りた。ハリウッド映画みたいな小説で二時間くらいで終わってくれるとありがたいんだが、千頁を超える大著。特に烈火のごとき長ーい説教が繰り返されるのには参った。だがこれが本書を清教徒たちの末裔たるアメリカ産業家たち、そしてグローバル時代の世界のリバタリアンたちの『天路歴程』にした。金儲けしか頭にないような「卑猥なくらいの金持」こそ理性を有し思考する最良の人間。人類の闇を照らす光であり、野蛮の深淵から引き揚げる救世主。彼らがストを起すと文明は野蛮に戻る。2025/03/26
きみー
10
亀のような速度で、ゆっくりと読了。これがあと2冊もあるだなんて…幸せなような辛いような。アメリカの大陸横断鉄道を中心に巡る人たちの生き様が描かれます、が、なかなかくどい文章に所々話から置いてかれることも。ただ、人と人の対比がとても上手く、かつ関係性の掘り下げでグイグイ話を進めていくので面白く読めました。公平性をこれ程までに気持ち悪く描けることが、興味深いです。何が健全で何がそうでないのか、「社会のため」は何を意味するのか考えさせられます。 ところで、「ジョン・ゴールト」って何者なんでしょう?2016/06/27