内容説明
ユードラ・ハニーセットはひとり暮らし。人づきあいもせず、単調な日々を送っている。周囲に向ける視線も態度も辛辣で、厭世家という言葉がぴったりの老人だ。日々思うように動かなくなる自分の体。このままだといずれ病院のベッドに寝かされ、たくさんのチューブをつけられて死を待つしかなくなる。それならば、自分の意志で人生を終わらせたい、尊厳を持って死を迎えたいと考え、ユードラは安楽死を求めてスイスのクリニックに電話をかける…。
著者等紹介
ライアンズ,アニー[ライアンズ,アニー] [Lyons,Annie]
書籍販売、出版業界での勤務を経て作家デビュー。イギリスで『Not Quite Perfect』をはじめとする7作品を発表しており、本書はその6作目。執筆活動のかたわら、創作の指導も行う。夫とふたりの子どもとともに、ロンドン南東部在住
金原瑞人[カネハラミズヒト]
1954年岡山市生まれ。法政大学教授・翻訳家。訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書など600点以上。訳書に『不思議を売る男』『青空のむこう』『国のない男』『月と六ペンス』『彼女の思い出/逆さまの森』『何かが道をやってくる』『小さな手 ホラー短編集4』など。エッセイ集に『翻訳はめぐる』など。日本の古典の翻案に『雨月物語』など
西田佳子[ニシダヨシコ]
名古屋市生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。翻訳家・大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナミのママ
67
心に染み入る余韻がまだ続いている。こんな幸せな死に方があるだろうか。85歳で独居、他人との付き合いを避けちょっぴり皮肉屋の老婦人ユードラ。身体のあちこちは痛み、杖はついているものの、まだまだしっかりしている。そろそろ自分の生涯に終止符を打ちたいと、安楽死を求めてスイスのクリニックを検討中。そのタイミングで隣家に10歳のローズが越してきた。この現在進行形の展開と、ユードラの過去が交互につづられる。幸せとはなにかが押しつけがましくなく描かれ、高齢者の出会い、新たな付き合い方にもあたたかみを感じる良書。2024/09/09
しのぶ
5
2024年も残りわずか、いい本に出逢えた!「安楽死を求める85歳のユードラは、厭世家という言葉がぴったりの老人」と紹介されているけれど、ちょっと違うような。歯車がうまく噛み合っていなかった彼女の人生が、新たな出逢いによって再び輝きを取り戻していく。そういう筋立ては想像の範囲内だったけど、「ユードラ・ハニーセット」という人格が形成される過程が挿入されているのは予想外で、これがよかった。それぞれの人物像もステレオタイプじゃないのもいい。猫がいい味出していて、なんといってもかわいいのも!2024/12/16
kuku
0
誰かのために生きて、裏切られて、苦しんで、別れて、閉ざして歩んできたユドーラの人生の最後に素晴らしいプレゼント。どう生きるかどう死ぬかを改めて考えさせららる作品だった。しかし、決して重苦しいだけの内容ではなく、楽しく読めることは素晴らしいと思う。2025/02/24