内容説明
―父は、いつかの風の音、いつかの戦争、いつかの飛んでいってしまった鳥、いつかの大雪、いつかの生きなくてはという意志、それらが集まってどうにか一個の塊になっている匿名の存在。父の内面に抑え込まれたまま表現することもならず、わだかまって語られなかったことども―。過酷な現代史の渦が残した傷を負い、それでも生き抜いた名もなき父の物語。
著者等紹介
申京淑[シンギョンスク]
1963年、全羅北道井邑市生まれ、ソウル芸術大学文芸創作科卒。22歳で文壇デビュー。詩的で独特な文体で人気を博し、韓国文学を牽引する作家となる。李箱文学賞、現代文学賞、万海文学賞、東仁文学賞など受賞多数。2008年に発表された『母をお願い』(安宇植訳、集英社文庫)は世界41カ国で出版され、252万部の大ヒットとなった。2011年、同書でマン・アジア文学賞受賞
姜信子[キョウノブコ]
1961年、横浜生まれ
趙倫子[チョリュンジャ]
1975年、大阪府大東市生まれ。韓国語講師。パンソリの鼓手および脚本家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
34
読み友さんの感想を読んで。「わしは何もしなかった」というアボジから零れ落ちる記憶が、家族の言葉から拾い上げられていく様が見事だった。そして読みながら、自分と父親の関係を思わずにいられない。仕事好きで家庭には不在だった父の背中を思い返すことは難しい。けれども50を過ぎ、難しい年ごろの娘に向き合いながら、娘と自分の日々に父親の存在を目をすがめ見出そうとしている自分がいる。FENの流れる車内、霞が関ビル。…ボーナスが出ると千葉から都心まで美味しいものを食べに行った、あの帰り道。あの車内が父と私なんだなあ。2024/10/22
ケイトKATE
23
父親のことをきちんと向き合っていないことに気付かされる小説だった。作家のホンは、オモニ(母親)が入院したことで久し振りに実家に戻り、アボジ(父親)と暮らすことになった。アボジとの生活で、子供時代に両親を失い、朝鮮戦争で殺されそうになった辛い過去。20歳で結婚し、家長として子供たちのために懸命に働いたアボジの人生を知ることになった。家族の幸せがが自分にとっての幸せと信じたアボジの生き方に無償の愛を感じた。”生き抜いたんじゃ。父が言った。おまえたちがおったからこそ、生きたんじゃ、と。”最後の言葉に心打たれる。2024/05/24
卍ザワ
1
韓流文学とやらに期待してたのだが、なかなか、ページが進まず、読了に時間がかかってしまった。読みやすく、内容は悪くないが、思い返せば、朝鮮と相性が悪いのか、K-POPや韓流ドラマに嫌悪感を感じずにはおられず、本書にも苦手意識があるみたいで、話の続きに、まったく興味が持てなかった。ハン・ガンの「少年がくる」も、本書と同時に購入したのだが、ノーベル賞も獲ってるし、大丈夫だろう、と願わずにはいられない。 2025/02/05
takenoko
0
昨年末に図書館で借りて、読みきれないまま期限をむかえ一度返したけど、なんか気になってまた借りて読んだ。今の自分と重なるところが多くて、うまく読後感整理できない。田舎に年老いた両親を残し、都会で家族を持った、多くの壮年世代にとって、我が事のように感じる部分が多い。2025/02/16