内容説明
「ミス上海の死」を描く名作。茅盾文学賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
戦後間もなく、まだモダンと古風な浪漫が入り混じる趣のあった上海にて「ミス上海」に選ばれた王琦瑶。選ばれてから40年に渡る彼女の軌跡。同時に趣が変容していく上海の様子が各部の序盤にしっかりと描かれている。その点からも「上海」も主人公なのだ。人から好かれる王琦瑶だが、彼女の周りにはそういう人は去っていってしまう。それは彼女自身が間が悪かったり、周囲に興味がなさ過ぎたり、相手に判断を委ねて言い訳するなど、相手に不誠実だったりする点がある。相手の止まり木ではなく、通過点としかならない彼女の生き様に煩悶し通しである2023/12/20
はる
13
新中国から現代を青年、婦人、往年の人として生きた一人の女性王琦瑶の物語。青年の王琦瑶は何時も上海に求められ、上海は彼女を主張する。周りが彼女を主張する。やがて国共合作の破産と内戦。彼女を主張したOld上海は影を潜め、彼女も又一群の庶民の中に溶け込んてゆく。望まぬ妊娠。彼女はそれが人の弁えと産む決意をする。娘の成長・結婚。1986年春節を祝う爆竹は新しい予感を齎し、往年のファションを知る彼女の前に3つの意識が交流する。其の儘を愛そうとする者、其れをRemakeしようとする者、譲一部分人先富起来と打算的な者。2024/05/30
Ayako H
10
図書館から。600ページ越えの大作。一文が短く読みやすかった。丁寧に丁寧に情景を文字にし積み上げていく文体。常にフルネームもしくはあだ名のみで語られる登場人物。娘はアメリカで幸せに暮らしているのかしら。主人公はどこで道を間違えたのかしら。やっぱり最初の一歩、ミス上海か?大作で時間はかかったけど面白かった。2024/07/27
Mark.jr
9
上海という都市そのものが主役の小説だと、読んだ誰もが思うでしょうが。それにしても、こんなに静けさを感じる文章はなかなかないです。2024/07/03
ori
9
良かったーーー😭いくらでも読んでいられる。終わって悲しい。「繁花」+張愛玲って感じ。人を描いているようで、描かれているのは上海。出てくる人々は上海の様々な側面のメタファー。老上海への愛に溢れ、消えていった古き良き美しきもの、そんなものはそもそもなかったかもしれず、幻だったかもしれないものへの追想。時の残酷さ。人の想いはいつも誰かから誰かへの一方通行か、常にシーソー的な想いの重さが釣り合わない世界の描き方が良すぎた。2024/06/11