出版社内容情報
雑誌「つるとはな」で大きな話題となった未公開書簡の完全収録版。
須賀敦子は1967年に夫ペッピーノを失い、70年に父を、72年に母を失った。
帰国してまもない須賀は、深まる孤独のなかで生涯の友人と出会う。
その友情はやがて、四半世紀にわたりつづくものとなっていった。
こころを許した友人への手紙には、須賀の迷いや悩みが率直につづられている。
ときにはさりげなく、恋の終わりが打ち明けられることもあった。
55通の手紙を、青インクの筆跡もリアルな高精度カラー写真で掲載。
須賀敦子の全集未収録のエッセイ「おすまさんのこと」。
北村良子(須賀敦子・妹)へのインタビュー「姉の手紙」。
スマ&ジョエル・コーン夫妻へのインタビュー「須賀敦子とのこと」。
松山巖のエッセイ「コーン夫妻への手紙を読んで」も収録。
未公開のままだった40通も、本書に初めて掲載しています。
写真…久家靖秀
アートディレクション…有山達也
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
76
雑誌『つるとはな』に掲載された須賀敦子さんの未公開書簡が本になった。スマ・コーン、ジョエル・コーン両氏のもとに保管されていた手紙55通、1975年~1997年の約20年間にわたり交わされた私信である。収録された一通一通は、絵はがきがあったり、寿司店の包み紙やお菓子の箱の紙に書かれた手紙など素材や形態もさまざま。それぞれがまるでアート作品を見ているかのようである。写真家の久家靖秀さんが撮影し、須賀さんの直筆の文字をインクの染みまでリアルに写し撮っている。アートディレクションが有山達也さんで、レイアウトと装丁2016/08/02
aika
50
お菓子の包み紙やポストカードを踊る、青いインクのころころした字。死んだメダカ、ゼラニウム、勤務する大学への不満、実は愛していたアメリカ。友人コーン夫妻に宛てた55通は、あの静謐なエッセイとは全く違う、おしゃべりでお茶目、いたずらっ子な須賀さんそのものでした。日本文学をイタリアに植えていくことがやはり私の道だとナポリで確信し、自分のものが書ける時を待ち続け、最期まで書くことを止めなかった須賀さんの人生と文学の軌跡が、差出人住所の病院の番地と最期の手紙を伝ってきて、ただ惜しむことしかできずに本を閉じました。2020/02/16
U
42
お手紙を撮影した写真がそのまま載せてあり、図録のような感じで眺めて楽しめます。須賀さんの手書き文字に人柄が垣間見え、あたたかい気持ちになりました。手紙って、いいもの。わたしも厭わずに書ける人でありたいです。2017/01/19
kaoru
24
書簡をそのまま収録し、須賀さんの人柄がこれ以上ないほど伝わってくる書簡集。几帳面だが愛らしい丸みのある筆跡で打ち明けた繊細な心情。コーン夫妻はきっとかけがえのないお友達だったのだろう。活動的だった須賀さんだが鬱的な心境に陥ることも多く、それをまるごと受け止めてくれる友人がいてくれたから活力を取り戻せたのだと思う。複雑な思いを抱いていたアメリカを夫妻のもとを訪れて好きになったエピソードも素敵だ。「姉があんなにのびのびと書いている手紙は読んだことがありませんでした」という妹良子さんの巻末の言葉に胸をうたれた。2020/02/14
pohcho
19
須賀敦子さんが年若い友人夫婦に宛てて書いた55通の手紙。とても弾むような生き生きとした文章を書かれていて、エッセイで読むのとは随分違う印象。須賀さんは本当にすまさんの事を信頼されていたんだなあ。最後の妹さんのインタビューには、私も言葉にならない気持ちでいっぱいになった。 すべての封筒、便箋、葉書がカラー写真で掲載されていて、便箋の代わりにお菓子の包み紙を使っていらしたり、丸みのある読みやすい字とか、絵葉書のイラストとか切手とか、眺めているだけでもとても楽しい。贅沢な一冊。 2016/10/12