内容説明
19世紀末から20世紀初頭、ジャポニズムが流行した時期にヨーロッパに伝わった歌舞伎は、ドイツで翻案され、独自の変化を遂げた。ブレヒトにも大いにヒントを与えたと思われる日本の身体演劇=歌舞伎は、具体的にはどのように受容され、また変容していったのか。知られざる事実を丹念な調査で掘り起こし、丁寧に辿る、異文化交流史研究の成果。フローレンツによる独訳『寺子屋』の日本語訳(著者訳)など、貴重な資料も付す。
目次
第1章 ドイツにおける『寺子屋』―ケルンおよびベルリン公演(一九〇七~八)を中心として
第2章 ブレヒト『男は男だ』と筒井歌舞伎
第3章 ブレヒト『肝っ玉おっ母』と回り舞台
第4章 カトリンの身体言語と歌舞伎的手法
第5章 ガラス乾板写真「ドイツ歌舞伎」について
第6章 トク・ベルツのドイツ歌舞伎『勘平の死』
付録『寺子屋または田舎塾』(竹田出雲作/カール・フローレンツ独訳)田中徳一訳
著者等紹介
田中徳一[タナカトクイチ]
1949年生まれ、日本大学国際関係学部国際教養学科教授。博士(国際関係)。専門は比較演劇(史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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qoop
5
西洋的に翻案されたゲルスドルフ版「寺子屋」が不評だった20世紀初頭と、原典を重んじて上演されたトク・ベルツの「勘平の死」が好評を博した第二次大戦前とを比較し、また歌舞伎との類似性からブレヒト劇への影響を推察する。埋もれた資料を掘り出して提示された著者の課題は興味深い。前者に関しては、30年という歳月が異文化理解にどう影響したのか、ナチス政権下での日本文化への評価をどう判断するかなど、気になる点多々。後者については舞台機構の類似だけでなく、歌舞伎的な型芝居と叙事演劇の近さという指摘を憶えておきたい。2016/03/26




