内容説明
人生には奇妙な出会いがよくあるものだ。少年時代のひととき、風変わりな大人たちと過ごしたパリ郊外の家で起きたこと。
著者等紹介
モディアノ,パトリック[モディアノ,パトリック] [Modiano,Patrick]
1945年パリ郊外に生まれ、68年、22歳のときに発表した“La Place de l’´Etoile”で鮮烈なデビューを飾る。3作目の『パリ環状通り』(72)でアカデミー・フランセーズ小説大賞を、6作目の『暗いブティック通り』(78)でゴンクール賞を受賞。時間の錯綜を巧みに操る手法で、独自のミステリアスな作品世界を構築、フランスを代表する作家の一人として高く評価されている。2014年ノーベル文学賞受賞
根岸純[ネギシジュン]
1948年東京新宿生。1977年明治大学大学院博士課程単位取得退学。フランス文学専攻(ヴィクトル・ユゴー研究)。現在、明治大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ドン•マルロー
24
少年時代の思い出というのはしばしば鮮烈な印象として記憶に残されるが、そのことについて本当の意味で理解することができるのはずっと後になってからだ。本作が語るのはその悲哀と苦さについてなのだろう。本作の主人公は少年時代のひと時を奇妙な女たちの住む家で送ることになったのだが、そこでの生活は不穏な空気とともに突然に終わりを迎える。だが、時を経て当時の事態がようやく明瞭にのみこめるようになった頃には、既に全てが失われていて、手掛かりはほとんど残されていない。モディアノの亡霊たちとの対峙とは、そのときにうまれるのだ。2016/01/03
遠い日
13
子ども時代の一時期の、奇妙な大人たちとの暮らしぶりが淡々と描かれていく。なのにどこにもピントは合っていないイメージ。朧げに浮かび上がってくるかと思えば、いつまでたってもベールの向こうでの出来事のように掴みどころがない。そこはかとなく漂う「罪」とか「悪」の匂いも鼻先を掠めて過ぎていった。確かなものがないままの子ども時代の不安を浮き彫りに、人生のどうにもならない捩れのようなものを読み手は受け取る。2018/04/05
ringoringo
11
両親はいないけれども、優しい大人たちに囲まれて、それはそれで楽しく暮らしている少年の話として読んでいたら、何となく違和感を感じてきて、最後はちょっと悲しくなって、あとからじわじわ怖くなった。。。2016/05/07
myon
5
2014年ノーベル文学賞受賞のフランスの代表作家。モディアノ中毒になると言われるくらいの人気作家らしい。 少年時代の思い出の場面のひとつひとつが、最後にすっきり全体像となって本当は何が起こっていたのか、謎がわかるのだろう、と思って読み進んだが…そういう謎解きを期待する小説ではなかった。少年の視点で、パリ近郊での他人との暮らしや雰囲気にゆっくり浸るのがよいのだろう。2017/09/24
いのふみ
5
再読。主人公の少年時代の回想を基調に、ほとんど思いつくままに断片が投げ出されたような小説。この小説においては、少年とその弟とその周りの人々に結局何が起こり、どうつながっているのかが決定的には語られない。ヒントは提示されるが、核心は示されない。最後の1ピースが嵌まる快楽は与えられていない。その代わり、物語が立ち去ったあと残された読者は、懐かしさと、その背後にある不穏な宙吊りの快楽に浸されているのに気づく。2016/01/21