内容説明
「恐るべき出来事」が呼び起こす場所と記憶の文化。
目次
序章 場所と怪異の民俗学
第1部 心霊スポット考(心霊スポットとは何か;真相としての仮構;モノと感覚)
第2部 心霊スポットの諸相(将門塚のこと―将門はどう祟るのか;八王子城跡のこと―怪異の変容;おむつ塚のこと―或いはたくさんのお菊)
終章 誰がための心霊スポット
著者等紹介
及川祥平[オイカワショウヘイ]
1983年、北海道生まれ。成城大学文芸学部准教授。博士(文学)。専門は民俗学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
121
面白おかしい怪異伝説の地として扱われる心霊スポットだが、伝説が成立する条件や経緯を民俗学的に解明していく真面目な研究書。各地で心霊スポットとされる場所は、真偽を問わず非業の死や悲惨な事件があったとされる状況を言葉で語り伝えて、初めてそうだとして認められてきた。当初はその土地だけの伝承だったのが、テレビやSNSの発達で多くの人が訪れて思いを共有することで広まっていった。誰もが神仏を信じていた昔と異なり、科学や組織に縛られた現代人は非日常的な怪奇や恐怖に触れたい宗教的感性の発露の場となっているのが見えてくる。2023/08/02
HANA
69
センセーショナルな題名とは裏腹に、「心霊スポット」というものを地に足の着いた方法で検証している学術書。空間が物語を得て場所となるという目から鱗の事実から始まり、「心霊スポット」という語が何時から一般的になったのか。から、道了堂跡を例に出しどういう形で語られていたのかという研究から心霊スポット前史を明らかにしていく所などは怪談ファン必読。その後も将門塚、八王子城跡、おむつ塚からそれぞれの変遷を明らかにした部分、ネットで心霊スポットがどのように語られていたかも興味深いし。最後まで読み応えがある一冊でした。2023/07/19
Toska
24
民俗学が取り上げるのは、遠い昔の珍奇な風習ではなく、時代と共に変化し現代人をも規定している観念や見方である。著者のこのポリシーは、前著『偉人崇拝の民俗学』(https://bookmeter.com/books/11542373 )から一貫している。心霊スポットという卑近で「不真面目な」テーマを、理論と実証の両側面から丁寧に分析。地に足のついた研究態度と、対象に向けた誠実で温かみのあるまなざしが心地よい。前著同様、読ませる一冊。参考文献に稲川淳二や『ハロウィン』などが挙がっているのが面白かった。2025/03/07
ゲオルギオ・ハーン
24
YouTubeで同じようなまとめや現場訪問動画が出るほど心霊スポットは人気がある。そんな心霊スポットが形成される構造を研究したのが本書。研究としているだけあって、ただ心霊スポットの噂の真偽を調べるだけで終わらず、どうしてそんな話になったのかまで考察している。事件や不気味なものがあるとなにかしら理由をつけたくなるという心理は昔からあり、現代でもそれはネット掲示板や口伝で拡散の増加につながっている。全国にあるホワイトハウス系やおむつ(女性の名前)塚は似たような場所に似たようなエピソードが形成される好例。2024/10/07
佐倉
16
『心霊スポットとは「記憶」を語る「言葉」が構成する「場所」である』(p35)と序章に書くように心霊スポットにはどのような記憶、どのような言葉が意味付けられているのかを丁寧に浚っていく一冊。手始めに心霊スポットという言葉がどのように成り立ったのか、書籍・雑誌やテレビ番組、ネットを頼りに解き明かす章があったがまずこれが読み応えがあった。当初はゾーンという言葉が主流だったのがゼロ年代以降、スポットが主流となっていく。そこには車やカメラの普及によってドライブデートや観光が一般化していく人々の営みが反映されている。2023/06/15
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