内容説明
ソヴィエト連邦の崩壊後に、“ポストモダニズム”をまとって出現した、新たなロシア文学。その多彩な潮流を足がかりに現代ロシア文学の歩みを一望する。気鋭の翻訳者による待望の現代ロシア文学論。
目次
序章 ロシア・ポストモダニズムとは何か
第1章 ポストモダン的「空虚」の諸相
第2章 現実とノスタルジーの狭間で―「新しいリアリズム」の台頭
第3章 ザハール・プリレーピン、あるいはポスト・トゥルース時代の英雄
第4章 再定義される社会主義リアリズム―エリザーロフ『図書館大戦争』
第5章 交叉する二つの自由―自由の探求から不自由の自由へ
第6章 アイロニーの終焉―ポストソ連ロシアにおけるチェチェン戦争表象
第7章 身体なき魂の帝国―マムレーエフの創作における「我」の変容
第8章 ナショナルな欲望の再(脱)構築―二〇〇〇年代以降のソローキン
終章 ロシア文学のゆくえ
著者等紹介
松下隆志[マツシタタカシ]
1984年、大阪に生まれる。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
119
博士論文加筆修正。 最初は読みにくかった。ソローキンあたりだとだいぶ馴染み易い。 ソ連崩壊後、文学界とかどうなったかは興味深い処。 プーチン熱烈推しの文学者とかもやっぱりいてる2024/12/07
塩崎ツトム
17
他者、あるいは敵対者として西側と対峙したソビエト・ロシア→90年、00年代ロシアは、いかにしてポストモダニズムを受容したのか?そのナショナリズムはその空虚さ、統一性をナショナル・アイデンティティティとして、ソ連時代・ロマノフ朝時代にノスタルジーを抱く中、ウクライナのマイダン革命そんな国家のナルシシズムと、復興しつつあった大いなる物語を大きく傷つけるものだというのはなんとなく理解できる。ウクライナ侵攻はその旧時代な植民地獲得としてだけではなく、ソ連崩壊以前に回帰したいという反動?2024/12/31
かもめ通信
16
高校時代にドストエフスキーに熱中し、ソローキンをテーマに学位論文を書いたという1984年生まれの著者が、博士論文を基にその後の研究成果も踏まえて大幅に加筆修正して書き上げたいう本書は、2021年度日本ロシア文学会賞受賞作。ソ連崩壊後のロシアで多様化した文化や文学を、《ポストモダニズム》を軸に据えて読み解く試み。2022/05/10
garth
8
ドゥーギンとマムレーエフがいた「ユジンスキー・サークル」とはなにか。秘教学的にはそこが鍵になりそう。「交流は基本的に口頭で行なわれ、アパートでの朗読から成り立っていたが、この朗読会はある独特な宗教的秘儀へと変わっていった。そこには少しドストエフスキー的なものがあった。それは奇妙な魂の発現にも似て、どこに文学と人生の差があるのかを理解することすら困難だった」2020/09/02
雨松
2
著者が自身の博士論文に加筆したもの、故に素人(私)には難解。哲学思想の持って回ったような言い回しに眠気を刺激されながら何とか読む。資本主義による近代化をすっ飛ばして社会主義国家へ、その社会主義体制も崩壊してやっと自由な社会になれたかと思えば良い面ばかりじゃなかった。旧ソ連に郷愁を感じる若手作家、一度は西側に亡命したものの水が合わずにロシアに舞い戻った元反体制作家。ロシアという国はずっと迷宮から這い出せずにいる。だから興味深い文学が生まれるのだが。2025/08/02
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- 和書
- まいちゃんとしろいさかな