内容説明
本のなかの世界は、永遠だ。多忙な日々のかたわらにあった本、大好きな作家や歌人たち、そして旅の思い出…。なつかしい風景がよみがえる、魅惑の書評&エッセイ集。
目次
1 今、そばに居るひと(一人きりではないときの;佐助に導かれて―谷崎潤一郎『春琴抄』 ほか)
2 小さな光をあつめるように(先に生まれてはきたけれど;玄関先のマナー ほか)
3 切なさの先にあるもの(夜明けのマナー;「なんでもなさ」の残酷さ―江國香織『赤い長靴』 ほか)
4 とまどいながら生きていく(生きていくための呪文;あの日の歌 ほか)
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
1963年、広島県生まれ。歌人、作家。1996年、「草かんむりの訪問者」で第七回歌壇賞受賞。2016年には『いとの森の家』で第三一回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ikutan
78
2000年から2021年までのエッセイや書評を纏めた一冊。もちろん、歌人である筆者だから、短歌の引用も多くて、選び抜かれた言葉が味わい深い。印象に残ったのは、生命に対する慈しみが伝わってくる岡本かの子の歌と震災短歌。31文字に込められた思いは、時を経ても色褪せることなく、真っ直ぐに伝わってくる。江國さんや川上さんなど好きな作家の書評は、親しみを感じ、また読み返したくなった。どんなに時代が移り変わっても、本の世界は永遠で、受け取るものは、読み手次第なんですね。ユーモアのあるエッセイは、クスリと笑えて楽しい。2022/12/17
よこたん
47
“年月が過ぎれば自分をとりまく環境や状況がどんどん変わり、身体は年を取っていく。いやおうなく。でも、一度まとめられた本の中の世界は、ぴたりと閉じれば固い表紙に守られて、ずっと変わらない。” 読み返すたびに感じ方が変わるのは、自分が変わったからだと。どんな心持ちで読んでも、本は黙ってそこに居てくれるのだなあ。書評、エッセイ、短歌のこと。身体の中に沢山の短歌が収納されているようだと語る東さんと、好みの本のジャンルが近い気がして、とても嬉しい。食べ物アレルギー、高校野球(箕島高校)、思い出のいい匂いが漂う。2023/02/14
ケイティ
27
書評でもありエッセイでもあり、短歌もありの東さんならではの一冊。穏やかで優しい文章のようで、芯の強さも感じます。登場する未読の作品を読みたくなるのはもちろん、思わず高野文子を再読。2023/06/11
pirokichi
26
東直子さんの2005年頃~2021年に書かれた書評を中心にまとめられた書評&エッセイ。先日出かけた神田古本まつりに出店していた版元さんのお店で購入。タイトルが何ともいいなあと思って。「特別な興奮 八月の青い空」というエッセイの「クリーム食べるか?」には、思いっきりなつかしさが込みあげた。商店を営んでいた亡き伯母が家に寄るたびに「〇ちゃん、クリーム食べん?」と声をかけてくれてよく一緒に食べたから。蓋も舐めてたわ。東さんは歌人だから短歌の引用が多く、大西民子さんの歌集をよみたくなった。2022/11/02
まさ
21
東直子さんの書評&エッセイ集。書評は江國香織さんや川上弘美さんら、読んでみたくなる作品や再読したくなるものが連なった。これまでの東直子さんの作品からも感じているけど、感覚の好みが合うようだ。短歌のお話ももちろん豊富で、メモすることばかり。なにはともあれ、この1冊で紹介されているものを読んでいきたい。2024/05/04