内容説明
ウクライナとベラルーシの一部を占領した2030年代のロシア。引退して別邸で暮らす元大統領ウラジーミルPは認知症を患い、夜な夜なチェチェン人に襲われる夢を見る。その介護人シェレメーチェフは誠実に元大統領に尽くすが、反政府活動によって逮捕された甥を獄中から救い出すために多額の賄賂が必要となる。金策に行き詰まった彼は、ついに元大統領の私物に手を出して、物語は急展開を見せるが…。現代ロシアの暗部を巧みに諷刺するカオスな「滅茶フィクション」。
著者等紹介
ホーニグ,マイケル[ホーニグ,マイケル] [Honig,Michael]
ロンドン在住。元医師。本書が作家としての第二作目にあたり、初の邦訳作品となる
梅村博昭[ウメムラヒロアキ]
1961年、北海道に生まれる。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。専攻は、ミハイル・ブルガーコフ研究を中心とするロシア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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燃えつきた棒
35
※一部の特定の体質の方の消化を妨げる怖れがありますので、お食事の前後一時間には服用を避けてください。 二〇一四年のロシアによるクリミア併合後の二〇一六年に刊行された、二〇年後のロシアを舞台にした近未来小説。 「獣道家P」嫌いの僕にとって、本書を読むことは最高の喜びだ。/ さしもの悪名高きウラジーミルPも寄る年波には勝てず、認知症が進んで後継者にその地位を譲り、田舎にある別邸(ダーチャ)で暮らしている。 物語はウラジーミル爺さんの介護人である主人公の目で語られる。/2024/10/12
花林糖
14
(図書館本)ウクライナとベラルーシの一部を占領済みの2030年代の某国。認知症を患い引退した元大統領P。生真面目な介護士シュレメーチェフは彼の介護人として雇われる。物語に入り込めず時々目が滑りながらも読了。ピンハネ賄賂と認知症で悪夢を見る元大統領の姿が印象的。2024/11/22
SAT(M)
10
認知症になったロシアの元大統領Pの介護士が主人公。善なる彼の無垢な目を通すと、屋敷で働く同僚たちは気のいい人たち、だったはずが実は一人残らずピンハネ・盗み・横領・賄賂と、何かしらの不正を当たり前のように働いている事が見えてくる。不正の横行する屋敷はロシアの縮図となっており、国を腐敗させたPへの憎しみと哀れな老人への憐憫との間で懊悩と葛藤を繰り返す。内省的な感じはThe真面目なロシア文学。真っすぐヘイトを書くのではなく、葛藤の寄り道を経由してどり着く怒りと悲しみには強い芯がある。2025/03/31
ハッカ飴
7
人の国を笑えない。日本だって金以上に物を言わせるものを持っていない。人間て駄目なのかな?やっぱり権力は腐敗するしかないのかな。マルクスのいう(ってそんなに深く理解しているわけじゃないけど)本当の共産主義社会って、人間には作り上げることができないんだろうか。それにしても、なんとも言えない話だったなぁ。2025/03/28
どさんこ
3
認知症になったプーチンが幻覚のチェチェン人と戦う場面がなんとも言えず、笑ってしまう。しかも、彼は柔道の達人である。そして、彼の周りの夥しい賄賂の世界。その多くが現実ではないかと思ってしまう。この作者、プーチンに毒殺されなければいいのだが。2024/12/01
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