目次
レムリアが欲しい。さもなくば接合部の緩んだたて笛を
嬉々として跳梁跋扈するためには何が必要なの?玉ねぎかしら。
たくさんある朝の中から最適な一つを選ぶための転轍機が故障中
おまえのようなやつは空飛ぶ円盤に乗ってエントロピーの尻尾でも見つけてこい
渋滞解消の切り札として開発された五回「なぜ」を繰り返す狸、逐電す
「おれもまた荒廃をつくりだすことができるのだ」
上司は冷媒に過ぎないのだからおでんを買っておけば退散します
スリッパが大地と空気を接続していることを忘れると痛い目にあう
「わかりやすく」だなんてきみたちにせもののまゆだまみたくお言いでないよ
fascination
不可視の媒質を通じて屋根裏の詩から不正確が降りてきた
著者等紹介
大橋弘[オオハシヒロシ]
1966年東京都生まれ。1999年詩集『かいまみ』刊行。2018年歌文集『東京湾岸 歌日記』刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yumicomachi
2
2020年4月刊行の著者第三歌集。風変わりな歌が並び、煙に巻かれるその感じが妙に心地よい。感受性の、揉まれたところのない部分を刺激され、解きほぐされるようだ。〈まだ生きている雨雨の落ちどころ猫たちの目に見つめられてる〉〈眼を閉じるそしてアップルパイになる持ち運ばれてあたたかくなる〉〈現身にいいからはやくおでんでも買ってあげろよ(東京が死ぬ前に)〉〈屋根裏にみかんぶどうをしまいこむように書くのだソネットだけは〉〈きれいごとだけれどいいのみつくろいにこにこしているきのこを詰めて〉等。栞文は清水亞彦、白鳥信也。2020/04/30
Cell 44
1
「ピーマンに「お」をつけるなよいずれくる死の刹那にはつけちゃうかもな」「もうだめかもしくはだめになりそうなオクラは夢をみているはずだ」「タネのない西瓜が好きな歌人かな西瓜が嫌い歌人も嫌い」「僕たちは青は青でも死にかけの青を好んで外見にする」「まだ生きてゐるのか夜明けこれからも生きていくのか夜明けのやうに」言葉同士の世界ではふだん隣接しない言葉が偶発的に隣り合い、定型空間を分有する。表現内容というよりその分有の様態自体が世界における物同士の機会の様態と似通い、「既視感」が製造され、その既視から世界が見える。2020/10/08
青色
1
「気がつけば金曜の朝雨の朝、ブラッドベリもキノコですよね」「僕たちは青は青でも死にかけの青を好んで外見にする」特に好きです。表紙に使われている写真作品も好き。2020/05/28
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- 和書
- 罪人の嘘 角川文庫