感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
太田青磁
15
こんな夜に星を見ようときみは言うきみが夫でよかったと思う・カフェボールにカフェオレは満ち大切にされたいんだと気づく曇天・右手をあげておおきくわたしを呼ぶきみよ祖父がしていたようにおおきく・紫陽花の群れ咲く路地をすすめられその路地はいまだ六月のまま・かんたんに雪道の道消していた北風よ今わたしに吹けよ・二画面の野球のほうを消音にする父 もういい、もういいんだよ・プロトンは一瞬に過ぎ空間が厚みを持った風として吹く・遠くからきみを見ることめずらしく火を渡すように近づいてゆく2018/08/03
あや
4
ご家族やお仕事を詠んだ歌が好きです。義理のお祖父様を詠んだ歌がとくに素敵でした。2019/06/03
yumicomachi
2
2018年7月発行の第一歌集。静かで端正な印象の歌が多い。きみ(夫)、(夫の)祖父、故郷の福島を思う作品、職場の整骨院を舞台にした作品などを中心に編まれていて、それは栞文(米川千嘉子、穂村弘、小池光)でも触れられているが、私はそれらはもちろんのこと、過去を慈しみつつ再構築しているような歌に惹かれた。〈むかしから店閉じている金物屋 こどものきみとつらら舐めたい〉〈かなしみは誰でもひとり 若かった母の口笛澄んでいたこと〉〈枯れ草に雉は隠れてそこからはきみから聞いたきみの思い出〉など。2018/12/28