内容説明
「理不尽なのは〈世の中〉ではなく、私たちの〈頭の中〉である」。努力が報われず、抵抗が無駄に終わるのはなぜなのか。ビジネスコンサルタント・細谷功が、漫画家・一秒によるイラストとともに、「世の中」と「頭の中」の関係を明らかにし、理不尽さのメカニズムを説き明かすことで、人々をさいなむ閉塞感や苛立ちの原因に迫る。
目次
第1部 対称性の錯覚(錯覚の積み重ねと「三つの非対称性」―「善と悪」は対称か;「知識」の非対称性、「思考」の非対称性―知的能力が理不尽さを生み出す ほか)
第2部 時間の不可逆性(気づきにくい社会や心の不可逆性―湯は冷め、振り子は止まる;社会・会社の劣化の法則―「盛者必衰」の真理からは逃れられない ほか)
第3部 ストックの単調増加性(「微分と積分」と現実―増やすのは簡単、減らすのは困難;のこぎりの法則―増えだしたら止まらない ほか)
第4部 「自分と他人」の非対称性(宇宙と「人間の心」―「絶対的中心」があるかないか;コミュニケーションという幻想―「言葉の意味」の共有は難しい ほか)
第5部 「見えている人と見えていない人」の非対称性(決定的な非対称性―「見えていない人」には「見えている人」が見えない;「全体像」という幻想―自分の視野の狭さには気づきようがない ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
158
世の中にあふれる理不尽さが、人々の頭の中にある「間違った対立構造」によるものだとする考え方の本。理不尽に感じていることが、実は自分の頭の中で勝手に作った「理」にそぐわないというだけで、それに抗おうと努力することそのものが意味をなさない可能性について示唆されている。どのコンテンツもコンパクトに纏められているが、全体的に抽象的で、わかるようなわからんような読後感。2019/07/07
spatz
18
端的にいうと、人間とは矛盾した生き物で日常のコミュニケーションは理不尽の宝庫、なんでこうなっちゃうか、の、可視化を試みる。 「具体と抽象」て本がなかなかすごかった。これも近隣にすむめちゃくちゃ賢い中学生にすすめられた、はじめて出会うタイプの本だったので、この著者のものをもうひとつ。相変わらず読むのに時間がかかる。噛み砕いて頭に入ってくるまでに時間がかかる。決してこの人の文得意ではないのだけど、読んでおかねば、て気にさせるのはなんなんだろう。可視化、てわたしにはあまり得意でない作業かも。2020/10/19
__k
6
(U)理不尽なのは世の中なのではなく私たちの頭の中/一度上げてしまった品質のレベルを下げるのは至難の業/自分と他人の非対称性-人は自分を中心にしてしか物事を考えられない/公平という幻想基準は人間の数だけ存在する-成績や能力を公平に評価する方法などこの世の中にはなく、自分が高く評価される基準こそが公平な基準であると皆が思っている/人は不公平にできている。だからこそ与えられた公平ではない環境で努力することに意味があり、努力の成否は他人と比べて結果が良かったかどうかではなく、比較対象は努力しなかった自分なのだ2020/05/12
sho watabe
5
「理不尽なのは世の中ではなく私たちの頭のなか」というのがキーメッセージ。 さらに非対称性というのがポイント。 一冊を通じて様々な非対称性を説明し、最終的にキーメッセージに戻ってくる。 共感したところは気づいている人は気づいていない人に一所懸命に気づかせようとするが、それは無駄ということ。 この問題の解決策を示している一文が下記。 「外の人にできるのは、中の人に『外は楽しそうだからちょっとだけ見てみよう』と思わせること。」 やはり人を変えるためにはまず自分が変わり、魅力的になることが一番効果的。2019/11/02
かずぼん
5
本書の中に出てくる「コミュニケーションにおける最大の問題は、それが達成されたという幻想である」というバーナード・ショーの言葉がカギとなるように思う。発信者と受信者との役割に分かれて論じられることが多いが、結局は相手と自分とのギャップを理解しないと、双方がストレスをためることになる。川の流れの比喩にしても、世代間のギャップが起こる理由がよくわかる。大きなリセットを推奨している訳ではないが、視野の狭く、見えていない人とのコミュニケーションの際は留意すべきだが、自分が視野が狭く見えていない人でないか自問したい。2019/09/17