感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
70
著者は部落にルーツを持つ人物で、「差別は「する/しない」「したい/したくない」という問題ではなく、社会の中に「ある」ものだ」ということが、自身が体験した「悪意なく繰り出される」差別や性的少数派の人々との交流、我が子の性別の違いによる周囲の反応の差などを通して語られます。タイトルは、差別は自然になくなるのだから、それを訴えて寝た子を起こすようなことはするなという論からきているのですが、そうではなく、差別が「ある」社会構造を、自分が加担している自分も関係する問題として認識することの重要性がよく了解できました。2024/05/21
Nobuko Hashimoto
27
著者は、関西の被差別部落出身で東京で解放運動に取り組む両親のもと東京で生まれ育つ。部落差別はないものと思われている環境で孤立感に苦しみ、解放運動の組織中心主義にも疑問を抱き、自分らしい取り組み方を模索する。高校卒業後は映画製作を学び、そののちwebでの活動にたどり着く。子ができる頃から、セクシュアリティなど、著者自身意識してこなかった、部落差別以外のマイノリティとマジョリティの問題にも目を向けるようになる。2024/09/21
ちどり
10
被差別部落問題は簡単な問題ではないと、当事者の上川さんの体験を読んで実感できる、その上で思う。多分、誰でも、程度の差こそあれ、何らかのマイノリティなのかなと。そして、誰かが発した、悪気のない言葉で、思いがけずに傷つく。そして、その逆もある。2024/07/11
宮崎太郎(たろう屋)
9
東京に限らず関西以外では同和教育を受けた事がない人がほとんどだと思う。新潟出身でやはり同和教育を受けた事はなく、差別はあくまで歴史教科書の中の単語の一つだった。関西の大学に進んだ友人と「なぜわざわざ同和教育を教えるのか?知らずにすんだ事なのに」と話し合った記憶がある。悲しくなるほどマジョリティ特権の側から多くの物事を見てどれだけ知った気になっていたか。差別を考える時いつの間にか自分は受け入れる側に無意識に立っている。もっと世界を広げたい。多くの人とこの一冊を共有したいと思う。2024/02/24
ひさちゃん
8
一気読み。東京生まれで、部落にルーツのある二人の子どものお母さんが綴ったエッセイ。子どもの頃の家族のことや学校でのこと、青年期に入ってからの映像制作に携わったこと、子育てや子どもとの日々…どれもぐぐっときた。このようなエッセイを世に出してくれて、本当に感謝しかない。たくさんの気づきを得ることができたから。部落差別は今もあるし、差別は社会にあり、その社会を変えていかなくてはならないと強く思う。2人の子ども芹ちゃんと遊ちゃん(仮名)がどんなふうに大きくなっていくのか、とても楽しみ。2024/02/17