感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
71
著者は部落にルーツを持つ人物で、「差別は「する/しない」「したい/したくない」という問題ではなく、社会の中に「ある」ものだ」ということが、自身が体験した「悪意なく繰り出される」差別や性的少数派の人々との交流、我が子の性別の違いによる周囲の反応の差などを通して語られます。タイトルは、差別は自然になくなるのだから、それを訴えて寝た子を起こすようなことはするなという論からきているのですが、そうではなく、差別が「ある」社会構造を、自分が加担している自分も関係する問題として認識することの重要性がよく了解できました。2024/05/21
Nobuko Hashimoto
28
著者は、関西の被差別部落出身で東京で解放運動に取り組む両親のもと東京で生まれ育つ。部落差別はないものと思われている環境で孤立感に苦しみ、解放運動の組織中心主義にも疑問を抱き、自分らしい取り組み方を模索する。高校卒業後は映画製作を学び、そののちwebでの活動にたどり着く。子ができる頃から、セクシュアリティなど、著者自身意識してこなかった、部落差別以外のマイノリティとマジョリティの問題にも目を向けるようになる。2024/09/21
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
18
神戸にきて間もない頃、神戸っ子との誇り高き老若男女が当然のように「あの人はこれだから」と指を3本、4本と突き出すことに衝撃を受けました。40年以上も住んでおきながら未だ神戸と同化できないのは、この体質がゼロになっていないと感じるからです。生まれ育った北陸の地方都市では、大っぴらについてそれについて語られることはなく、恥ずかしながらその問題については全く無知でした。施政者が支配のために意図的に差別を作り出すなら、明日は我が身。自分が絶対に差別される側にはならないとは言い切れません。当事者ではない無知こそ、↓2025/08/11
にたいも
10
一気に読んだ。/「私は、この社会には差別があって、あなたはそれと闘っていくのだ、負けてはいけないのだと育てられた。しかし差別があるから強くならなくては、ではなく、(我が子)が無理して強くならなくても、のびのびと過ごせるための環境をつくることが、親として私がやるべきことなのではないか。おぼろげながら進むべき方向が見えてきたような感覚があった。」(p.142)/差別なんてもうないのに特権を得ている決めつける「現代的レイシズム」と、細かい形で生活の中に紛れ込む「マイクロアグレッション」の説明もわかりやすい。2025/08/14
ちどり
10
被差別部落問題は簡単な問題ではないと、当事者の上川さんの体験を読んで実感できる、その上で思う。多分、誰でも、程度の差こそあれ、何らかのマイノリティなのかなと。そして、誰かが発した、悪気のない言葉で、思いがけずに傷つく。そして、その逆もある。2024/07/11