感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
44
生と死は私的なものなのに、どちらも自分でコントロールができません。乳がんで両乳房を全摘した母の苦悩を見て育った私には嫌というほどの追体験でもありました。母のお見舞いに行って木登りしてみた空の色。お風呂で見た母の傷。湯を揺らす母の鼓動。ぞっとするほど鮮烈によみがえってきて恐ろしくなりました。Undying…一瞬にも永遠とも感じられたあの日々を時のはざまに押し込めたような、力強くももろい生命賛歌です。2023/10/07
zoe
22
原本2019年。訳本2023年。乳ガンを患い、科学的に、文学的に書き残す。読書半ばで、訳者後書きを読む。作者は、書きたくないものを書きたくないと宣言した上で、書きたくないものの説明をし、書きたいものを書く。想像の世界観とサイエンスと批判と皮肉が入り混じる不思議なスタイル。参照をしっかり記載しているあたり、とても素晴らしく、サイエンスと文学が入り混じっており、特に素晴らしいのは、さらに訳注が充実していること。訳者をはじめとする日本語版への意気込みを感じます。失礼ながら里山社を知りませんでした。2023/08/19
くさてる
20
乳がんと診断されたアメリカの詩人による一冊。通り一遍の闘病記ではなく、もっと繊細に、静かに、怒り、悲しみ、空虚さ、といったがんにまつわる詩人の思索を表現したもので、文学的な読み応えがあった。ひとつひとつの文章を切り出すとそれだけでまた違う意味合いと重さが産まれてしまうような、言葉の力を感じた。2024/08/13
YukoNexus6
2
著者は、私とほぼ同じ時期に乳がん治療をしていたのだな。でも、私が自分の著書(「 #tbk_yuko 」)に書いたものとは大きく違う。まずがんの種類、治療の内容。同じ病名でもこれだけ違った体験をするものなのだ。そして私がいつもするように日記として記録していた日々を、彼女は長大な詩として編み上げた。これを原語で読めたらなぁ。私にとって過去のものになりつつある乳がん—10年目になる今年で検査からも卒業。銭湯でも左胸の傷痕を隠さなくなった—の思い出を引き出しながら読み終えた。2024/02/04
宮崎太郎(たろう屋)
2
原題は「痛み、脆さ、死すべき定め、医療、芸術、時間、夢、情報、疲労、ガン、ケア」と長い副題がついていた。乳がんを生きた人たちの声、自らの声を様々なテーマで手記を拾った本。2023/08/17