内容説明
構想10年。国際アンデルセン賞・韓国候補作家が、日本軍慰安婦、対日協力者、アメリカ日系人収容所など、複雑な日韓の近現代史を女の視点から描く傑作エンタテインメント。女とは、階級とは、国とは、人種とは。海を越え運命を切り拓く少女たちの物語。2018年度国際児童図書評議会オナーリスト選定図書!
著者等紹介
イグミ[イグミ]
1962年生まれ。1984年「新しい友文学賞」に短編童話が入選し、作家活動を始める。30数年にわたり、濃密な人間愛に満ちた作品をたゆまず発表してきた。小泉児童文学賞、尹石重文学賞、方定煥文学賞を受賞。子どもから大人まで幅広い年齢層の読者をもつ。2020年ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞の韓国候補作家に指名された
神谷丹路[カミヤニジ]
東京都生まれ。韓国語翻訳、日韓関係史研究。1980年代に、韓国延世大学へ留学。産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞。早稲田大学、法政大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かもめ通信
24
反日闘争、対日協力者、従軍慰安婦、日系人収容所……避けて通れない時代のあれこれと、恋愛や結婚、人種差別も人の温かさも、向学心も経営手腕もといった、いつの時代にもある普遍的なあれこれとが混ざり合って、絡み合った運命の糸。韓国と日本だけでなく、ロシア、アメリカ、中国と、世界をめぐる波瀾万丈。朝鮮近代史を盛り込みながら(それじゃあ、あのプロローグの女性はどっちなのーっ!!)と、最後までぐいぐい読ませるぐいぐい読ませるエンタメ度も十二分。TVは滅多に見ないがドラマ化されたらこれは見たいかも。2023/05/10
星落秋風五丈原
21
「そこに私が行ってもいいですか?」タイトルは、畳と引き換えに子爵の家に働きに行く時にダブルヒロインの一角・スナムが聞いた言葉だ。貧農で子沢山の一家に生まれたスナムが、富裕な貴族の家で暮らすことなどありえなかったからだ。スナムが赴いた子爵の家には、蝶よ花よと育てられた令嬢チェリョンがいた。生まれ育ちが全く異なるのに、第三者からは“よく似てる”と言われた二人は、日中戦争から長い戦いに突入する激動の朝鮮半島の歴史に飲み込まれていく。ここまで書いて「あ、これ、韓国ドラマでよくあるやつ!」と思ったあなたは正解!2022/09/05
ちょび
17
何不自由のない子爵の娘チェリョンとチェリョンへの誕生日のプレゼントにと買われた極貧の小作の娘スナム。重大な選択を迫られるときにスナムは、あえて難しい方を選んでいるようにさえ見える。「そこに私が行ってもいいですか?」と言った7歳の少女が、朝鮮半島、日本、アメリカ、中国と暮らす場所が変わっても、戦時の最中でも何とかそこで生きていくしぶとさを持つスナムのしなやかな強さが際立つ。慰安婦問題も取り上げられている。韓国では社会的イシューを児童書で扱うのは日本より一般的とのこと。それはとても大切で必要なことだと思う。2023/05/13
太田青磁
10
「そこに私が行ってもいいですか?」あちこちつぎはぎだらけで、袖口がぼろぼろの木綿のチマ・チョゴリを着て、髪はいつ洗ったかもわからないような身なりだった・「字を習ってどうするんだ?」「えっと……、迷子になったとき、だいじょうぶなように……」・スナムは期待しながら、最初のページをめくった。思わず胸が高鳴った。何も気にせずに本が読める現実が信じられなかった・「チェリョンは、皇軍女子慰問隊に行かなければならん」「そ、そこに、私が行きます皇軍……」・「あのう、私をアメリカに連れて行ってくださることはできませんか?」2022/06/26
宮崎太郎(たろう屋)
8
ゆうに2冊分の分量の長い長い小説。植民地時代の朝鮮で生きた二人の女性を主人公に朝鮮を離れ、日本、満州、アメリカを渡り歩く半生と時代を巧みに反映させた物語です。これだけの歴史を描きながら、韓国ではティーンノベルとして若い人に届く形で出版されたそうですが、世代を問わずまた日本を含む他の地域の人にも自分の物語になる一冊でした。感想や歴史、時代のことを人と話したくなる気持ちにさせます。2022/04/28
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- 小説 野性時代 第226号 2022年…