内容説明
遠藤周作が絶賛した小説「夏の花」の作家が、原爆投下以前の広島の幼年時代を追憶する美しく切ない短編小説集―。広島・被爆70年という歴史の節目に、同地出身の詩人・小説家、原民喜(1905~1951)の文学を紹介。「三田文学」等で活躍し、原爆投下直後の広島の惨状を描いた名作で知られる作家・原民喜。戦後、自ら命を絶つ前に作家自身によって編まれた短編小説の連作「幼年画」をはじめて単行本化。古書・蟲文庫の店主でエッセイストの田中美穂の解説を付し、原民喜の知られざる初期作品に新しい光をあてる。
著者等紹介
原民喜[ハラタミキ]
詩人・小説家。1905(明治38)年、広島県広島市に生まれる。少年時代より、次兄と雑誌「ポギー」を発行するなど文学に親しみ、同人誌に詩や散文を寄稿する。一八歳で慶応義塾大学文学部予科に入学し、上京。創作活動のかたわら、左翼運動にも関心を深める。その後、同大学の英文科に進学。太平洋戦争開始後の1945(昭和20)年1月に広島に疎開し、8月6日に原爆被災。戦後ふたたび上京し、慶応義塾商業学校・工業学校夜間部の嘱託英語講師を務め、「三田文学」の編集と創作活動に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoko
17
図書館。小説家で詩人の原民喜の作品、初読。 子供の頃の、怖いものの見え方や、兄弟間の諍い、夏の日の海辺の様子など、子供の気持ち、心象風景がまざまざと思い出された。まるで自分が雄二という年端のいかない子供になったような気がしてくる。それくらい細かく情景が活写されていて、目の前に音、触覚を伴って、立ち上ってくるようだった。タイトルの「幼年画」はまさしくぴったり。 田中美穂氏の解説を読んで、「夏の花」も読んでみたいと思いました。2016/07/03
葵衣
10
透明感のある非常に美しい文章で、子どもの目線から見た日常の様々な出来事への思いが、丁寧に繊細に綴られている。読んでいて、胸の奥がじんわりと満たされるように感じた。2018/10/01
まんぼう
5
装幀の絵に惹かれて購入。情景がありありと浮かんでくる筆致。ただ小さな子どものなにげない日常を綴っているだけなのに、それがとても美しい。他愛ない日々の見方や子どもの視点を持つことによって浮き彫りにされる幻想的なまでの既視感。文章そのものを舌で転がしたくなるような、美しい日本語を、久しぶりに味わった。2015/09/26
Amano Ryota
4
僕にとっての幼年期と言うのは、もう茫々としていて、記憶の端っこのつつかないと出てこないところにある。それでも印象として覚えているのは、薄暗い場所にいた記憶だ。いや、全然普通に太陽の下を走り回っていたんだろうけど、屋外の記憶というのはあまりない。襖の閉まった和室とか、叔父さんの書斎とか、光があまり届かない室内に1人でポツンとしている光景が記憶には浮かぶ。多分現実には、親とか友達とかそういう人が側にいたんだろうけど。本書は、淡い光しか届かない場所、世界に放り投げられて抱いた不安、そんな風景を描いていると思う。2016/01/08
ホンドテン
1
図書館で・・・書題通り就学齢以前の幼年期を描いた私小説。冒頭の貂の錯綜ぶりに手こずるー小地獄もそうだが幼児の虚実の幻視か。そうそう光、それゆえの暗闇に満ちてたなぁと共感・・・し過ぎて最後の朝の礫あたりで悲鳴を上げそうになる。2023/06/02
-
- 洋書
- PETIT SOLEIL