目次
なによりも作家であった
三島由紀夫の誕生
果てしない試行錯誤―『盗賊』
性の自己決定―『仮面の告白』
時代の代表たろうと―『獅子』『愛の渇き』『青の時代』
多面体としての性―『禁色』『潮騒』『家族合せ』など
舞台の多彩な展開―『卒塔婆小町』『鰯売恋曳網』『鹿鳴館』
美の呪縛―『金閣寺』
時代と向き合う―『鏡子の家』
世界の破滅に抗して―『女は占領されない』『憂国』『美しい星』など
神への裏階段―『喜びの琴』『絹と明察』映画『憂国』『サド侯爵夫人』など
肉体の言葉―細江英公写真集『薔薇刑』『太陽と鉄』など
雅びとエロスと―『豊饒の海』一(「春の雪」)『英霊の声』『朱雀家の滅亡』
究極の小説―『豊饒の海』二(「奔馬」「暁の寺」)
行動者としての死
著者等紹介
松本徹[マツモトトオル]
昭和8年(1933)札幌市生まれ。大阪市立大学国語国文科卒。産経新聞記者から近畿大学、武蔵野大学教授をへて、現在は三島由紀夫文学館館長。「季刊文科」「三島由紀夫研究」各編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
2
三島を文壇の寵児としたのが「仮面の告白」なら、作家としての地位を確立したのは「金閣寺」であろう。前者では自らの幼少時からの性的倒錯を描き、その後、文体の改造と同時に肉体の改造を進め、書き上げたのが名作「金閣寺」だった。私小説と語りながら自身の同性への思いを描き、「仮面の告白」発表後は男性との性体験まで終える。終戦間際の活字メディアしかない時代のせいか、それほどのスキャンダルにならなかったようだ。テレビからネットまで一瞬にして当事者を追い込む現代なら、この天才も抹殺されていただろう。良き時代の作家だった。2015/11/05