感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
34
田中功起の連載で、再演とは参加者や時代や場所を相対化することで、その出来事を現在の文脈に置き直すことによって批評性を獲得する方法という定義をしている。なるほどその通りだ。巻頭では東浩紀の平和についての一連の論考の続きがある。ウクライナ戦争後、平和を守るためにこそ銃をとるべきだという機運が高まっているときに、東の脱構築は平和を政治的思考の停止の場、平和ボケの場をつくることによって真に政治的に平和を考えるということを試みる。今回訪れたボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアは冷戦後に分裂と紛争が起こった地域だ。現在2024/10/14
ひろ
1
東浩紀の「考えない平和」はともすれば多民族共生を現状追認的に断念せよと言っているようにも思われ、これはかれによる本格的な論考を待ちたい。日本の絵本出版の歴史を辿る阿部卓也『絵本が登場するとき』は魂心のものだ。あと横浜トリエンナーレについての田中功起『アートを再考し、朝ご飯を作る』、イスラエルの大学における学問の自由を巡る動き、神宮再開発反対派の論拠にむしろ戦前回帰の危うさを指摘する論考が面白かった。2025/02/21
sucksuckhello
1
ゲンロンは人文系雑誌の中で特に時間の流れが独特というか、現代的なテーマをきっちり抑えつつ、立ち止まって思考を促す書き手が志を持って編纂しており、忙しなさすぎて若干疲れている自分には癒しになる。17は戦争の影が濃厚にあり、重たいテーマのものが多いが、それでも読むのをやめられない刺激的なものばかりだった。 特に印象に残ったもの:石田英孝、星野博美、田中功起、近内裕太、辻田真佐憲、落合陽一・清水亮・暦本純一の鼎談2024/12/24
ハーブ
1
近内悠太さんの章、孤独を忘れるためにこそ物語はある。物語こそホモ・サピエンスが生き残るために必要な途方であり、物語には排中律に抵抗することもできるのではないかとも書かれていた。(排中律って言葉は初めて知りましたが論理学の3大原則の一つらしいです)。ユヴァルノアハラリが書かれたホモ・サピエンス全史にも物語について同じような示唆されていた。いまなお私たちはお金や資本主義という物語に振り回されている哀れな羊というわけなのだ。🐹2024/12/18
なをみん
0
今号もやっぱり「考えないこと」から出発して平和を考える姿勢とかいろいろ刺激的な共感ばかり。日本の絵本の歴史とかテレアブセンスとか哲学からみた芸術とか、外にある何かをどう描くのかがアートだとか、社会を変えるのはむしろ個人の親密さだとか、集団主義的内ゲバ的日本とか、チベット映画とかアフリカとか、孤独感を一瞬でも忘れるための物語とか能面制作AI小説!とか刺さる気になる話題が盛沢山でした。2025/03/14
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- 和書
- 魔女の笑窪 文春文庫