内容説明
革命は「家」を否定する。ソ連の指導者たちが夢見たのはユートピアか?ディストピアか?
目次
革命と住宅(ドム・コムーナ―社会主義的住まいの実験;コムナルカ―社会主義住宅のリアル;スターリン住宅―新しい階級の出現とエリートのための家;フルシチョーフカ―ソ連型団地の登場;ブレジネフカ―ソ連型団地の成熟と、社会主義住宅最後の実験)
亡霊建築論(ロシア構成主義建築とアンビルトのプログラム;ソ連映画のなかの建築、あるいは白昼の亡霊;スターリンのソヴィエト宮殿、あるいは増殖する亡霊;フルシチョフのソヴィエト宮殿、あるいは透明なガラスの不透明性について;ブロツキーとウトキンの建築博物館、あるいは建築の墓所;ガラスのユートピアとその亡霊)
著者等紹介
本田晃子[ホンダアキコ]
1979年岡山県生まれ。岡山大学社会文化科学研究科准教授。東京大学大学院総合文化研究科修了。博士(学術)。専門はロシア建築史、表象文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
49
ロシア的なイタさを建築というモノで可視化、客観化してくれる。建築は人が住むために、否応なく身体性を通じて思想が表出し、誤魔化しが効かない。著者は意地が悪い。前半は革命、後半はアンビルト(不発)というのがロシアらしい。前半では何といっても1戸に複数の家族が同居する「コムナルカ」だ。古来よりユートピア思想には家族の解体、反・家族がある。したがって、居住スペース以外の水回りなどは他人と共有だ。トイレに便座が付いていないので「マイ便座」を持ち、朝、トイレの前に行列をつくる。トイレの中がプライバシーを保てる唯一の時2023/10/19
てつ
29
圧倒的に面白い。社会主義革命と労働力と住宅について、綿密に描かれている。日本の公団住宅のモデルとなったというコンパートメントなど、全く知らなかった。リアル書店の出会いは素晴らしい❗️2024/02/12
owlsoul
10
エンゲルスは、劣悪な住環境の出現は所有という概念によるものだ、と説いた。共産主義は私有財産を批判し、革命後、住宅は個人の「家」ではない共有の居住空間へと作り変えられた。しかし、そんな理想と現実は徐々に乖離しはじめ、最後にはスターリンを父とし祖国を母とする巨大な家父長制が復活する。住宅建築の過小により民衆が狭い居住空間に押し込められる傍らで、国家の理念を仮託した実現不可能な理想的建築の計画や設計が声高に喧伝されていく。そんな無数のアンビルト建築の存在は、まさに机上の空論であるユートピアの具現化そのものだった2024/07/14
iwtn_
5
住宅・都市に興味があり、時事的にも興味深いロシアの住宅の歴史を、革命と造られない紙上建築という現象から読み解く。革命によって生まれるはずだったユートピアを実現するために家族が解体され、それが住宅に反映される様子はとても興味深い。思想という頭の中にある(しかない)ものと住居・家族という物理的存在の軋轢。革命が失敗した現在でも独裁者は幻想を追い求めて戦争が続く。資本主義は行き過ぎたが、共産主義はあまりにも幻想的過ぎた、のかもしれない。全体の生産量を上げつつ自由の範囲を拡げて、かつ、環境に配慮、か。ムズいな。2024/06/23
takao
2
ふむ2023/12/18
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- 洋書
- Living Proof