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内容説明
いつかここが焼け野原になったら、何が何でも戻ってきて、杭を打とう。五反田の街を歩きながらこの空を飛行機が埋め尽くした夜のことを想像してみるのだった。大宅壮一ノンフィクション賞作家が描く、もうひとつの東京大空襲。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
107
祖父の手記がすべての始まりだった。大五反田、北は覚林寺通称清正公、南は26号線、円の中心は五反田駅周辺。祖父の時代から自分の故郷域はこの範囲内。戸越銀座と武蔵小山の地域の違い。ゲンロンの依頼で五反田の歴史を連載したが、五反田の街の歴史は祖父がいかに昭和の時代を生き抜いたかを辿る旅でもあった。そもそも工業地帯になった由来から、軍需工場ができプロレタリア運動の場となり、武蔵小山から満蒙開拓団として移住した集団、東京空襲で焼け野原となり、土地の奪い合いがあったことまで、すべて祖父から父を経て自分に至る道となる。2022/12/08
遥かなる想い
97
祖父が生き抜いた五反田の風景を通して、東京大空襲を描いた作品である。 五反田に対する著者の想いが随所に垣間見れて、面白い。 あまり知らなかった戦時下の五反田の風景を 丹念に再現させた 作品だった。 2023/11/23
よしたけ
70
五反田周辺にルーツを持つ著者が、千葉から居を移した祖父の記録等を通じ昭和以降の五反田を考察。今でこそオフィス街になりつつあるが、過去は軍需工場が軒を並べ無産階級が住まいした五反田。そんな過去を消そうと、東急目「蒲」線の名称を捨てたり、ハイソな雰囲気を纏おうとする街への皮肉を吐いてみせる。隣接する武蔵小山にも注目し、戦時中に中国へ大量移住し浮かばれなかった人々がいたことも明らかにする。始めは軽い調子で五反田歴史を学べると読み進めていたが、日本が戦争でいかに多くを失い、変容させられたかを考えさせられた一冊。2023/06/04
優希
59
第40回大佛次郎賞受賞作。五反田を軸に語られる歴史が興味深かったです。五反田の歴史を見ることは、馴染みのある土地のルーツを見るようでした。小説のようなノンフィクション。高級住宅地でもあり、商店街もあり、独特の地域の史実の流れはこれからも続いていくのでしょう。2023/01/17
kawa
45
著者・星野家の五反田での親子3代のファミリー・ストーリー。私も祖父・父の過去の追っかけで新潟・北海道と訪ねまわったり、著者の言う「大五反田」圏の北端に縁があって、白金台~五反田~大崎と、よくウオーキングしていたのでとても共感度が高い一冊。武蔵小山商店街の人々が満蒙開拓団で多数犠牲になったことは知らなかった歴史のヒトコマでショック。農村地帯の人々のみの悲劇だけではなかったのですね。2022/12/06