内容説明
『遊びと人間』の3年後、1961年にロジェ・カイヨワは物語「ポンス・ピラト」を発表する。無実のイエスを死刑に処してよいのか?ピラト苦悩のひと晩を通し、臆病な人間が勇気をもって正義を決断するメカニズム、宗教の本質、そして日本人にはわかりにくいキリスト教における十字架刑の意味についてカイヨワが“物語”という形式で考える。1962年コンバ賞受賞作。そのほか、大洪水のなかで神の不公平な殺戮を思う義人の物語「ノア」、ポロックの絵画を介した記憶のあいまいさに起因する小篇「怪しげな記憶」、肉体を離れた男の精神が究極の実在に達するさまを描く「宿なしの話」。カイヨワ作のフィクショナルな物語全4篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まどの一哉
1
ピラトは官吏としては平凡な男で、文人であり、優柔不断ではあるがまっとうな正義感を持っている。ただ、事なかれ主義者としても今回の件は判断がむずかしい。 ひとつはメネニウスの進言。囚人のうち一人が恩赦を受ける祭日にあたり、民衆はイエス以外のほうを選んだ。よってやむなくイエスを処刑するというもの。責任を免れるとともに、一般受刑者と同時に処刑を行いイエスの聖性を除去する。手を洗う儀式も行って穢れも除去。いかにも政治的な方法。2019/04/22
刳森伸一
1
思想家として知られるカイヨワのフィクションを集めた作品集。表題作を含む4篇の物語を収録しているが、全体的にやや退屈。箱舟で有名なノアの葛藤を描いた『ノア』は、ノアの心情を描き過ぎでこれでは余韻には浸れない。表題作の『ポンス・ピラト』は最も長く、そして最も面白いけど、「思想」が出過ぎている。2014/06/03
monado
1
表題作は、ピラトが恐ろしく入り組んだ論理思考の果てにイエスを無罪とし、その結果……というある種の架空歴史もの。ピラトの頭の中の描写が延々と続くわけだが、そこには現代SF的ともいえる平行世界への洞察などまで登場し、圧倒される。まさに「知られざる麗しの傑作」と呼ぶにふさわしい。2013/09/01
ねんそ
0
「怪しげな記憶」と「宿なしの話」は正直よくわからないまま読み進めたのでアレですが、「ポンス・ピラト」は星野 之宣、諸星 大二郎あたり好きなら読んでみるといいんでないかな、って思いました。「ノア」も悪くないです。2015/11/20
piece land
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ノアは共感できた。 ポンス・ピラトは疲れた。 2014/04/30