出版社内容情報
著者のライフワーク研究による、新たな認知症の病型を提唱・解明する!
本書の特長
〔巻頭言 より抜粋〕
●私は、2000年頃から認知症と生活習慣病との関連に関心を持つようになり、生活習慣病という観点から認知症を予防し、進行を抑制できるのではないかと考えてきました。当時は変性型認知症であるアルツハイマー病を高血圧や糖尿病などとの観点から捉える考え方にはあまり賛同は得られませんでしたが、現在では常識となり生活習慣病という視点にたってアルツハイマー病の発症予防や進行抑制が期待されております。
●根本治療薬はまだ登場しておりませんが、たとえ登場したとしても修飾可能な要因をコントロールすることによって将来の認知症予防につなげることは、今後の認知症対策では最も重要なことだと考えております。特に、糖尿病と認知症との関連については多くのエビデンスが集積され、私自身臨床でも両者の深い関連を実感しており、実際に糖尿病を併発した認知症患者は増えつつあります。
●ところが、臨床を重ねていく中で糖尿病を背景としてアルツハイマー病や血管性認知症とは明らかに異なる病像を呈する症例を経験するようになってまいりました。当初、その背景や病態はよく分かりませんでしたが、その後の教室の精力的な研究で、糖代謝異常を背景とし、アルツハイマー病理や血管性病変の関与はないかあっても軽微であることから、「糖尿病性認知症diabetes-related dementia」という新たな認知症の病型の提唱につながりました。
●これらの多くは今まではアルツハイマー病として診断されて対応されてきましたが、背景病理や病態は明らかに異なり、血糖管理によってコントロールすることも可能な認知症であることから、適切な治療やケアを考える上でも本症の正確な診断は重要と考えられます。
●本著では、糖尿病と認知症の関係、さらに私達が提唱してきました糖尿病性認知症について、最近の文献報告や教室の成績も含めて概説しました。今後の認知症診療にたずさわる多くの方々のお役に立てれば幸甚です。
目次
第1章 序論
第2章 認知症と糖尿病の将来推計
第3章 糖尿病による認知症の発症リスク
第4章 糖尿病による認知症の発症メカニズム
1.AD病理の促進
2.糖毒性による神経細胞障害
第5章 糖尿病患者の脳病理所見
1.糖尿病患者脳でAD病理は増加していない
2.疫学研究と病理所見の乖離
第6章 糖尿病患者の神経心理学的特徴
第7章 糖尿病患者の脳画像所見
1.脳萎縮と大脳白質病変
2.脳血流代謝画像
3.大脳白質の線維構造変化や機能的線維結合連絡の異常
第8章 認知症治療の現状と展望
1.症候改善薬
2.疾患修飾薬
第9章 認知症の視点からみた糖尿病治療
1.糖尿病治療薬
第10章 糖尿病を併発した認知症患者の総合機能評価
第11章 糖尿病性認知症
1.概念
2.症例提示
3.神経精神症状
4.脳画像検査
5.脳脊髄液検査
6.背景病理(アミロイド/タウPET)
7.病態
8.治療
9.ケアと予防
10. 診断のためのガイドライン
第12章 糖尿病の視点からみた認知症予防