出版社内容情報
萩原朔太郎賞受賞作品を著者本来の意向に従って3分冊化。タクシー運転手の組合が乗客を人質にして自爆テロを計画する予言的な長編詩分離する朔太郎賞受賞作??
疎外は夢
解離は憧れ
死は古典
運命のように
血は血を演じ続けるのだ
私は新しい猿たちに告げよう
この立ち枯れた宇宙の片隅では
起源無き動力があらゆるものを支配している
それを人間たちのように「時間」と呼んではならない
君が見たものの一切は
君自身の外部の形象にすぎないのだから
それを人間たちのように「世界」と呼んではならない
退屈なのだおそらく
何もかもが
君には
(栞=寄稿:井土紀州、著者解題)
雑誌「重力01」のために
「TDU(タクシー・ドライバーズ・ユニオン)」という長編詩を書いていた。
たしか九月が〆切りで、それに間に合うように書いたのだったが、
さあ入稿しようとした直前にニューヨークで派手なテロが起きた。
いわゆる「9.11」である。
「TDU」は
タクシー運転手の組合が乗客を人質にして自爆テロを計画するという詩だったので、
ああやられたと思った。
「9.11」のあとで「TDU」を出したって遅い。
予言詩的なテクストを書いていただけに残念だった。
〆切りが延びたことを幸いに私は長編詩「TDU」を瓦礫化することにした。
松本 圭二[マツモト ケイジ]
著・文・その他
内容説明
雑誌「重力01」のために書いていた長編詩「TDU」を瓦礫化。分離する朔太郎賞受賞作。
目次
アストロノート予告編
アストロノート
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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7
「詩にできることは「否定」だけだ」という一行からはじまる長篇詩、愚痴や怒りや憎悪が矢継ぎ早に叩きつけられ止まることはないそのなかで、死んだはずの「ポエジー」が、ギリギリのところで再生しようとする、「誰も冗談で詩を書いたりはしない。」2018/03/31
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6
満員電車の中で読んだ。殺伐とした気分になる。2019/05/21
Yusuke Oga
5
長い、長い長編詩。もはや破れかぶれで、破れかぶれであることに価値を置いている、自分で自分の詩を「瓦礫化」させた、途方もない試み。時折顔を出す「こんな赤裸々な日常のゲスいこと詩に書くなよ」みたいな行に出くわす瞬間がかなり面白いし、かなり笑える。関係ないけどこの間吉祥寺で観たアリ・アスター監督の『ヘレディタリー/継承』というホラー映画も、倫理的に(人として)これはやっちゃいけないんじゃないですか、みたいな惨劇が起こるのだが(ジャンル映画だから出来た強みでもあるけど)、別に僕がモラリストってわけではなくて、2019/02/02
2
限界。しばらく詩を書かなくなったのも分かる(現代詩手帖に掲載された『ミミズノウタ』は『電波詩集』の反復だし……)。『青猫以後』は「読める」。ただ、『アストロノート』は厳しい……「読めない」。ただ、『青猫以後』『アストロノート』『電波詩集』という本来の形として出せたことは良かったと思う。2021/07/16
TOMYTOMY
1
井上紀州の解説を飲んで欲しい。 ひたすらもがき、経済に怒る。2020/06/15