感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MI
89
ウラオモテヤマネコは何万年も形を変えずに生きています。ウラオモテヤマネコの仕事は裏の世界と表の世界を旅すること。ある日美しい少女と出会い、裏の世界に連れて行ってほしいと頼まれます。裏の世界を見た少女は、こんなにも美しいならば、家族を連れてきたいといって、連れてくると、彼女の友達やその家族が裏の世界に訪れて 、、。裏と表と不思議な世界。井上さんの独特なタッチの絵に引き込まれる。装丁が猫の絵が切り抜きになっており、かわいい絵本。他の本も読んでみたい。2023/08/19
アキ
88
「裏の世界から見れば、裏が表で、表は裏なのだけれど」それがウラオモテヤマネコの口ぐせ。美しい瞳の少女は、裏の宇宙を見せてもらい、みんなを呼び寄せてしまいました。みんないなくなった表の世界には宇宙が広がり始めていました。この絵本はイリオモテヤマネコ保護基金に寄付をしてます。もしかしたら、イリオモテヤマネコも人間が増えすぎた裏の世界から表の世界に移住したのでしょうか。裏表紙に、イリオモテヤマネコの手紙に望みが書いてあります。それは「一欠片の分け合う気持ち」ですと。奪ってばかりの人間へのメッセージでしょうか。2021/10/30
masa
78
憂鬱とまではいかないけれど明日になることが愉快じゃない。そんな日曜日の夜、ふとんの中で思う。ほんの少しだけ赦しあえただけでかなり生きやすくなるのにな。誰かの間違いを見つけては、悪に仕立てて正義で叩く。寛容性がなく排他的なくせにネトネトした押しつけがましい優しさをなすりつけてくる。いつの間にかふとんにしのびこんだウラオモテイエネコが言う。「まぁ悪の世界からみれば、悪が正義で正義は悪なのだけれど」。つむじを嗅いだ。世界がつづいていくための秘密の匂い。きみが美しいから好きなのではなく、きみの美しさが好きなんだ。2019/09/01
(C17H26O4)
72
世界はだれかがいないところでその美しさを増すのではなく、常に既にその儘に美しいはずなのではないのかな。見方や見え方によってではなく。見られていても見られていなくても。だれかがいてもいなくても。「裏の世界からみれば裏が表で表は裏」「表の世界からみれば表が裏で裏は表」ウラオモテヤマネコさんは謎かけのようなことばと、お手紙を残して消えてしまいました。2023/01/17
り こ む ん
51
世界の裏と表を行き来する猫のお話。裏も表も実はなく、裏にいけば、そこが表になり、表が裏となる。表があるから裏がある。でも、その裏はウラオモテヤマネコにしか、見ることができない世界。一時だけ見ることができても、そこで、生活をしてしまえば、見慣れた日常となる。求めても手に入らないモノ。人が入り込めば、失われる自然の営みを知ってほしい。それが、メッセージなのかな?ちょっと、難しい絵本なのだけど、巻末のイリオモテヤマネコからの手紙を読むと、そう感じる。静かで優しい絵本なのだけど、ちょっと、ごめんなさいって悲しく2015/10/04