内容説明
私たちは働かねば生きていけない。それは本当だろうか。思想家たちはそれぞれのテーマを思索する中で「労働」を自明のものとせず、「働く」とは何か、「生きる」とは何かについて考えていた。「労働」から見える人・社会・世界とは。年代・出身地・分野も異なる個性豊かな思想家たち―それぞれの思想と労働観をこの1冊に収録。
目次
シェイクスピア 演劇と労働の力学―「以降」の思想のために
ロック 労働が所有権を基礎づける?
ルソー 『社会契約論』を読む
ヘーゲル 人倫的生活における市民社会の「絶対的否定性」
マルクス 「潜勢的貧民」としての「自由な労働者」
モース 社会主義・労働・供犠
グラムシ ポスト・フォーディズム時代のヘゲモニー
ラカン 労働と「うつ」―四つのディスクールと資本主義
サルトル ストライキは無理くない!
ウィリアムズ ストライキ、共同体、そして文化〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポルターガイスト
3
労働をテーマにした近現代西洋思想の論考集。現代思想のいい入門だとは思う。ただ質のばらつきは結構あるような。はじめのシェイクスピアやロックあたりを読んで切るのではなくルソーやホックシールドを読んで買うか考えるといいと思います。2022/10/07
Mealla0v0
3
前川真行「カステル 労働という重力」。自身が邦訳を担当した『社会問題の変容』を踏まえつつ、その背景まで論じてくれるという親切設計。連帯は社会保険によって実現したが、この社会保険という統治技術は賃労働によって可能になった。というのは、これまで何か事故でも起きれば私的所有(私有財産)によってどうにかせねばならなかったが、社会的所有はこれをクリアする。土地=財産がなくては、あるいは根を張ることができなければ、生きていけなかった。だが、社会的所有は移動の自由と安全を可能にした、と。(脱)領土化を初めて理解した。2021/03/03
2
これは優れた現代思想入門だと思う。2016/09/14
. bunjin
0
多くの思想家が「労働」とどう格闘したのかを、その道のエキスパートたちが解説している。非常に興味深い本。労働なりマルクスなりについて書くには、最近は堀内出版が深い道案内役的本を紹介してくれているという噂を聞いたが、それは当たっている。中山元の「哲学者は労働をどう考えてきたのか」はこの本を簡略的に解説したものだといえよう。
ゆまはふ
0
なかなかにゴツい名前が並んでいますが、アクチュアルな現代の社会・労働の問題に引きつけた論じ方がなされていて面白く読めました。これは素晴らしい本だと思います! あまり理解できなかったところも多いので、また読み返してみたいですね。2021/01/09