内容説明
1926年、印刷会社の歴史的な労働争議に参加し、解雇され、失業した著者が、自らの経験を題材に書き上げたプロレタリア文学の記念碑的作品。労働者のギリギリの闘いと最底辺の街の記憶が、80年の時を超えて生々しく甦る。平井玄による必読の解説「21世紀の太陽のない街へ」を収録。
著者等紹介
徳永直[トクナガスナオ]
1899年‐1958年。プロレタリア作家。小学校卒業前から、印刷工・文選工など職を転々とした。その後勤めた熊本煙草専売局の仲間の影響で文学・労働運動に身を投じ、1920年に熊本印刷労働組合創立に参加。22年山川均を頼って上京。博文館印刷所(後の共同印刷)に植字工として勤務。26年、共同印刷争議に敗れ、同僚1700人とともに解雇される。29年この時の体験をもとにした長編「太陽のない街」を雑誌『戦旗』に連載。労働者出身のプロレタリア作家として支持を得た。弾圧下の37年には時代の圧力に屈して『太陽のない街』の絶版宣言を行なったこともある。病死。享年59
平井玄[ヒライゲン]
1952年、東京生まれ。音楽、思想、社会等の領域を独自の視角と文体で論じる。早稲田大学文学部抹籍。現在、横浜国立大学教育人間科学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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由萌
10
小林多喜二とはまた違う視点を持ってるプロレタリア作家。拷問などの描写はなくどこか肉感を持った文章だった。解説にも小林多喜二の蟹工船などは男性小説とされ、徳永直のこの太陽のない街は女性小説とされると記されてした。戦闘シーンは自分も巻き込まれるような緊迫感があって良かった。そして、現代にも形は違えど太陽のない街があるという真実を皆が知るべきだと思った。労働というのは、本当に平等に出来ていなくて難しい。2017/11/03
コカブ
1
1926年、摂政宮が東京高等師範の視察に訪れた。高師と本郷台地の間(現在の白山通り沿い)には東京随一の貧民窟トンネル長屋が広がっていた。住民は近くの大同印刷に勤める職人が多かったが、大川社長の横暴に耐えかねてストライキを起こしたのだった。ストライキは長期に渡ったが、会社・警察の切り崩し工作はストライキ団を苦しめてゆく…。1926年に起きた共同印刷小石川工場のストライキをモデルに、29年に徳永直が発表したプロレタリア文学。徳永は、植字工としてストライキに参加し、解雇された。東京の違った一面が見られる。2012/12/16