出版社内容情報
《内容》 「自明性の喪失」などの著書で精神病理学の発展に寄与したブランケンブルクによる編集。妄想をパースペクティヴ性(遠近法)の概念と関連づけて把握しようとする、ドイツ精神病理学会の重鎮たちによる論文を集成。妄想体験と妄想ではない体験は、それぞれどのように構築されるものなのか、この問題について考察する場合、パースペクティヴ性のモデルほど好都合な出発点はない、との立場に立ってまとめられた新しい精神病理学の展開を記録した書。著者はブランケンブルクのほかに、ヴィンクラー、クーン、クノル、クラウス、グラッツェル、シャルフェッター、フォン・バイヤー、ベネテッティ。
内容説明
本書は、編者のもとに結集したドイツ語圏の主要な精神病理学者たちが、「パースペクティヴ性」という新たな概念を援用しながら「妄想」の解明を試みた記念碑的論文集である。パースペクティヴの可能性や能力は妄想においてどのように損なわれているのか、そしてこのことは妄想体験を理解する際にどのような意味をもっているのか、さらには妄想的でない関係はいかにして成立可能なのか、といった問題に迫る。
目次
パースペクティヴ性と妄想
人間的な営為としての出会い、出会いの障害としての妄想―パースペクティヴ引き受けの精神病理
パースペクティヴ性の病理
変容した覚醒意識状態としての妄想
妄想と自己―獣化妄想の例に見られた自己像の一次元的な歪み
同一性理論から見たメランコリー性妄想
精神療法の観点から見た妄想
相互作用的現象としての妄想
妄想治療の現存在分析的側面と精神薬理学的側面―完全に対立するかに見える二つの治療法の接近へ向けて
結語 パースペクティヴ性vs.パースペクティヴ主義―パースペクティヴ可動性不足の病理からその治療へ
著者等紹介
ブランケンブルク,ヴォルフガング[ブランケンブルク,ヴォルフガング][Blankenburg,Wolfgang]
1928‐2002。元マールブルク大学精神科主任教授。1993年に退官。L.ビンスヴァンガーの現存在分析的研究を継承し、20世紀後半の現象学的・人間学的な精神病理学研究の第一人者として活躍した
山岸洋[ヤマギシヒロシ]
1958年生まれ。1984年京都大学医学部卒業。1988‐90年マインツ大学病院精神科留学。現在、京都大学医学部附属病院精神科神経科勤務
野間俊一[ノマシュンイチ]
1965年生まれ。1990年京都大学医学部卒業。1994‐96年ヴュルツブルク大学精神療法・医学的心理学研究所留学。現在、京都大学医学部附属病院精神科神経科勤務
和田信[ワダマコト]
1967年生まれ。1992年京都大学医学部卒業。1994‐97年ミュンヘン工科大学精神医学教室留学。現在、京都大学医学部附属病院精神科神経科勤務
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。