出版社内容情報
胎乳児期の身体像は、生後二歳頃まで母と子の繊細な部分対象(性感部位)を通して形成されるが、以後抑圧されて無意識化されながら個体の生命感覚の基盤となる。この身体像(基礎的心像、機能的心像、性感的心像、力動的心像)が、どれほど繊細な母と子の相互交流によってつくられ、いかに個人の運命を支配するのか。深くしなやかな言葉で、子どもの「いのちの像」をみごとに伝えてくれる。①はその理論篇。
フランソワーズ・ドルトは1908年にパリに生まれる。39年に学位論文『精神分析と小児医学』で小児科医の資格を得るとともに、フランス精神分析の第一世代の分析家に師事。翌40年、トルーソー病院の診療主任となり、以後78年までこの病院で児童精神分析の活動を続けた。その分析治療の実践はすばらしく、理論家ラカンはむずかしいクライエントの治療はドルトに依頼したという。78年以降はそれまでの経験を集成した著作活動や講演に専念。また、60年代以後は育児相談のラジオ番組にも出演し、その誰にでもわかる美しいフランス語の相談は広く大衆に親しまれ「精神分析おばさん」の愛称で呼ばれる。本書は最晩年のドルト理論の集大成とでもよぶべき本である。1988年死去。
「ドルトに教えられたことの基本を一言で表すなら、子供を肯定すること、そして子供の肯定の仕方である。…なぜ肯定することが先で、しつけや教育が後なのか。…それは子供の無意識的身体像つまり子供のナルシシズム的な連続感(自分が自分であるあり方、自分が同じであるあり方)を弱めないためである。無意識的身体像を弱められた子供は、この世界に実在感と安心感を抱くことができず、生きて行く力を奪われたことを意味するからだというように。」(芹沢俊介/中日新聞 1994.10.9)
内容説明
胎乳幼児の身体像は、生後二歳頃まで母と子の繊細な部分対象(性感部位)を通して形成されるが、以後抑圧されて無意識化されつつ個体の生命感情の基盤となる。ドルトの精神分析学は、この身体像が、どれほど繊細な母‐子の相互交流によってつくられ、いかに個体の運命を支配するかを、深くしなやかなことばで語ってくれる。
目次
第1部 身体図式と身体像(身体図式は身体像ではない;身体像における生の欲動と死の欲動;身体像の力動的三側面)
第2部 去勢―身体像とその運命(象徴性を生む去勢;臍帯去勢;口唇期去勢;肛門期去勢;鏡;一次去勢〈非エディプス期の性器的去勢〉;エディプス・コンプレックスとエディプス期の性器的去勢〈近親相姦の禁止〉;リビドーを解放するものとしてのエディプス期去勢におけるナルシシズムの意義)