内容説明
徳川宗家第16代当主・徳川家達のあゆみ。明治憲法体制下において貴族院議長はいかなる役割を果たしたのか。各種史料を駆使してその実態を描き出した力作。
目次
序章 議会政治史からみる徳川宗家の近代
第1章 貴族院議長の「誕生」―帝国議会の開幕
第2章 貴族院議長・近衛篤麿の議会指導とその限界
第3章 徳川家達と大正三年政変―「公平」と「院議」のはざまで
補論 柳田国男書記官長との確執―貴族院議長と貴族院事務局
第4章 ワシントン会議全権委員への選出とその影響
第5章 憲政常道期の貴族院議長・徳川家達
第6章 徳川家達の「重臣」化構想
終章 貴族院議長・徳川家達と明治立憲制
著者等紹介
原口大輔[ハラグチダイスケ]
1987年9月熊本県に生まれる。2010年3月九州大学文学部人文学科卒業、九州大学大学院人文科学府進学、2015年3月同大学院博士後期課程修了。博士(文学)。九州大学大学院人文科学研究院助教、同専門研究員などを経て、現在、日本学術振興会特別研究員PD(青山学院大学)、公益財団法人徳川記念財団特任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
10
貴族院は、衆議院という民意を抑え込むという負のイメージもあるが、東條内閣を批判した事実もあり、好意的に見れば、突起物を日本人感覚で均す役割があったともいえる。その意味で、反動の代表、徳川の殿様家達が30年間も同院議長を務めたのも腑に落ちる。2019/05/22
秋津
2
「徳川公と申せば貴族院…貴族院と云へば徳川公」と近衛文麿が評したように、30年の長きに渡り貴族院議長を務めた徳川家達に焦点を当て、家達及び貴族院議長の政治的位相の解明を試みた一冊。 「上下調和の機関」としての貴族院での議会運営、ワシントン体制への関与、政党政治や貴族院改革、後継首班選定(と天皇大権)など、近代日本における重要な問題に係る意義深い考察であると感じた。 個人/公人としての家達の役割をどの程度区別すべきか、それによって色々な考察の起点になるかもねと柳田国男との確執に関する考察を読みながら。2018/10/28
takao
1
ふむ2025/06/27
中将(予備役)
1
表題どおり、貴族院議長徳川家達と立憲制を追った研究書。第一章でまず衆議院議長の選出方法が激論の末決まったことから、議長権力の大きさや二院の位置づけの違いを確認し、第二章で近衛篤麿議長の運営を記述する。序章と第三章で院議に従う形で公平を実現した徳川家達議長を記述し、第四章でワシントン会議への注力とそれにより受けた批判を、第五章で政党政治の時代に独自に政党化した貴族院で「公平」が実践できなくなった様を研究する。小林書記官長は異議の出ない委員指名を回想していたが、この時期反対する動議が通ったりしていたようだ。2025/03/31